杉流馬締と宇和島拓哉のTwitter

杉流馬締が官能小説を、宇和島拓哉がラノベやノベライズを書きます。

池袋晶葉とイチャラブえっちする本 第3章&エピローグ

アイドルマスター シンデレラガールズに登場する池袋晶葉とのイチャラブです。
千葉ーザム氏(@barzam154__)の池袋晶葉ツイートに影響されて書きました。

zamlog 池袋晶葉イチャラブビジネス新書をあなたが読むべき8つの理由

 

第1章はこちらです。


池袋晶葉とイチャラブえっちする本 第1章 - 杉流馬締と宇和島拓哉のTwitter

 

uwafii.hatenablog.com

                                        宇和島拓哉

 

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3章
「それでは、行きますよ~!」
 パチリ、と、ちひろが部屋の電気を消すと、クリスマスらしい音楽に合わせて、電飾がきらびやかに光り出し、幻想的な雰囲気を演出した。
「きれい!」
 美味しい料理に、楽しい時間。そして、女の子なら誰でも魔法を信じるクリスマス。
 日々忙しい時間を送るアイドルたちは、束の間の休息を楽しんでいた。
「にょわーーーッ!! サンタ登場だにぃ~~♪」
「きらり、口調で誰だかバレちゃうんだけど」
「はッ!? み、みんなー! たのすぃーパーティーにしようね~!」
 ステージでは、きらりんサンタたちがプレゼントを配っている。
「日本のクリスマスは、盛大でございますですね」
「そうだな」
 ライラと晶葉は、賑やかなスペースからは一歩離れ、ノンアルコールワインのグラスを傾けていた。
 ライラの生まれは中東の国だが、半ば家出のような形で日本へやってきた。
 しかし慣れないアルバイトに苦労し、家賃の支払にも困っていたところ、この346プロのプロデューサーからスカウトされたという経緯がある。
 そんなライラを、晶葉は衣服や家電の面で支え、よき友人としても交流していた。
「アキハさんから頂いた冬用の白衣、とてもあたたかでございます」
 化学系の実験に使われる厚手の白衣2枚を、ライラは赤と緑に染め、見事なクリスマスカラーのコートに仕立てあげていた。
「それはよかった。それに、うまく染まってるぞ」
「ありがとうです♪ アキハさんのピカピカも、とても綺麗でおわしますです」
「ふふ、そうだろう」
 音楽とともに会場を盛り上げる電飾は、実は晶葉の作品だ。
 ついこの前、晶葉とプロデューサーが二人で秋葉原へ買い出しに行き、その後組み上げたものだ。
「本当にすごいでございます。プロデューサーさんもさぞお喜びあそばされていらっしゃるですますね」
「ブッ」
 晶葉は思わず吹き出した。
 プロデューサーと晶葉の恋人関係は、ちひろ以外にはバレていないと思っていたが、どうやら違うらしい。
「ラ、ライラ。それはどういう意味だ……?」
「ん~、やまとなでしこの秘密でございます♪」
 真意を尋ねても、フフフ、と静かに微笑みを浮かべるのみのライラ。不思議な日本語を話し、不思議な生活を送る彼女には、なにか不思議な力が秘められているらしい。
 動揺した晶葉は、「これがオイルマネーか……」と、こちらも不思議な納得の仕方をしていた。
「そ、そうか」
「はい。アキハさん、プロデューサーさんは休憩ルームにいらっしゃいましたです」
「そうか」
「いってらっしゃいませです♪」
「う、うむ……」
 人はなぜだか、ライラが微笑みながら提案することを断ることができない。
 それはライラがアイドルとして人気を集めつつある理由のひとつであり、また、その影響を受けるのは晶葉も例外ではなかった。
 晶葉は会場を後にし、休憩ルームを訪ねると、プロデューサーが窓から星空を眺めつつ頬杖をついていた。
「助手よ。お疲れさん」
「あぁ、晶葉」
「その、一人じゃ寂しいだろうと思ってな」
 二人分の飲み物と軽食をテーブルへ置き、プロデューサーの隣へ晶葉が腰かける。
「ありがとう」
「星でも眺めていたのか」
「あぁ。それと、晶葉のことを考えてた」
 唐突に愛の告白のような言葉を言われ、晶葉の頬が赤くなる。
「そ、そうか。まぁ、恋人同士なら当たり前、か」
 『恋人』という、自分で言った言葉に、晶葉はさらに恥ずかしさを感じた。
 公私ともに頼れる男の人と、クリスマスに、恋人として、こうして夜空を眺めながら寄り添っている。
 改めてその幸せを噛み締め、晶葉はほんの少しだけ、プロデューサーの肩に身体を預けた。
「晶葉」
「ひゃいッ!?」
 突然の呼びかけに晶葉は驚き、思わず身体を離した。
「耳、こっちに近づけて」
「う、うむ」
 プロデューサーの真剣な表情に気圧され、晶葉は彼へ右耳を近づける。
「(一体、何を始めるつもりだ? 内緒話か? それならこの部屋には二人しかいないのだから、そのまま話をすればいいだろう。それとも、み、密室だから、その、耳に……!)」
 晶葉がいろいろな考えを巡らせていると、耳をひんやりとした金属製の何かで軽く挟まれた。
「できた。見てごらん」
 プロデューサーが、手鏡で晶葉を映す。月明かりで青白く照らされた晶葉の耳には、きらりと光る、かわいらしい小さな星形のイヤーカフが着けられていた。
「助手よ、これは……!」
 眉間にしわを寄せて考え込んでいた晶葉の表情が、ぱあっと明るくなる。
 イヤリングは耳たぶへ着けるが、イヤーカフは耳の軟骨を軽く挟んで着ける。微妙な差だが、その差が少女のオトナらしさを演出し、また、星形のデザインが中学二年生らしいコドモらしさも醸しだしていた。
「あぁ、クリスマスプレゼントだ」
「と、とてもかわいいぞ! ありがとう!」
「ふふ、どういたしまして」
 手鏡の中の晶葉が、様々な角度でイヤーカフをきらめかせる。チェーンが揺れるたびに、晶葉の笑顔も明るくなる。
「素敵だ……♪ まさか君からこんなに素敵なプレゼントがもらえるだなんて」
「気に入ってくれたみたいだな」
「当然だ! 他ならぬ君からのプレゼントだからな!」
 晶葉が満面の笑みで答える。
 そのかわいらしい表情に、プロデューサーは思わずキスをした。
「!?」
 ニコニコとした笑顔から、瞬間、頬を真っ赤にした困惑の表情へと変わっていく晶葉。
 コロコロと表情を変える彼女が愛おしく、プロデューサーは晶葉を抱き寄せ、もう一度キスをする。
「んっ、んんっ……ぷぁ!♪ い、いきなりなんだ!?」
 晶葉がうるうるとした瞳で彼を見上げる。
「すまん、晶葉がかわいかったから」
 プロデューサーが晶葉を見つめて言った。
「まったく……ま、まぁこのイヤーカフに免じて許してやろう」
 とは言うものの、まんざらでもない表情でそう返す晶葉。
 オレンジジュースをちゅーっとストローで飲み、一息つく。
 二人だけの空間で、晶葉とプロデューサーはしばらくキスをしたり、抱き締めあったり、晶葉が持ってきた軽食を食べていたが、時計を見た彼が、こう切り出した。
「そうだ、晶葉。街へ行かないか」
「今からか? しかしパーティーの片付けが」
「大丈夫だ、片付けは前川と多田たちに任せてある。ジャンボパフェ2人分のチケットで快諾してくれた」
「人がいいのか、現金な奴なのか……しかしそれなら安心だ。分かった。今日はクリスマスだからな」
 女の子にとって、アクセサリーは魔法だ。服やメイクほど外見を変えてはくれないが、どんな引っ込み思案の心でも、意中の男性へ微笑みかけられる、そんな心へと変えてくれる。
 今日の晶葉には、魔法がかかっていた。

「さすがに人が多いな」
 クリスマスというだけあって、街には人が多い。地下鉄の階段から地上へと出た瞬間から、はぐれてしまいそうな人混みにぶつかった。
「そうだな。晶葉、手、繋ごうか」
「あ、あぁ」
 プロデューサーに促され、晶葉が彼の手を握る。周りを見れば、同じようにして手を繋いで歩いている恋人がたくさんいる。
 私とこの人は本当に恋人同士なんだ、と、感じた晶葉は嬉しくなって、今にもスキップしたい気持ちになった。実際は、小さい頃からスキップが苦手なのだが。
 誇らしいのか、恥ずかしいのか。自分でもよく分からない。晶葉は自分の心に問いかけながら、プロデューサーから半歩遅れて歩く。
 彼の歩幅が大きいのもあるが、晶葉は今にも抱き着きたい気持ちを抑えて、代わりに彼の手を強く握った。
「晶葉。手、痛い」
「っわあ! す、すまん」
 プロデューサーが優しく微笑む。
「じゃあ、こうやって繋ごうか」
 プロデューサーは晶葉の指と指の間に、自分の指を絡ませ、いわゆる『恋人繋ぎ』をしてみせた。
「じょ、助手よ、これは」
 ラブラブカップル御用達とも言える手の繋ぎ方に、十二月の寒空に冷やされていたはずの晶葉の頬が、また熱くなる。
「こういうの、嫌か?」
「そっ……そんなわけない! そうだな、こちらの方が力がいらない割に、摩擦が増えて、離れにくくなるからな!」
 それらしい言葉をまくし立てて、照れ隠しなのか、晶葉がプロデューサーの半歩先を歩く。
 プロデューサーの左手は、大きくて、あたかかった。

 メインストリートから一本道を離れても、イルミネーションは続いていた。
 二人は幻想的な風景を眺めながら、ウィンドウショッピングを楽しむ。
 コートに帽子、ブーツやスカート。晶葉はロボやメカの研究をしているが、やはり女の子だ。そして大好きな彼の前ともなれば、もっともっと着飾ってみたくなる。
「どうだ? ちょっと大人っぽすぎるが、こういうのもいいだろう」
「あぁ。似合ってるよ、晶葉」
「ふふん♪ アイドルはファッションセンスも命だからな♪」
 そうして街を歩いていると、小さなケーキ屋が目に入った。
「お、おぉ……!」
 店先のショーケースには、クリスマスらしいファンシーなケーキが並んでいたが、その隅に置かれた珍しいデザインのケーキに、晶葉は目を奪われた。
「面白いな。ナットとボルト型のブッシュ・ド・ノエルに、ロボット風のサンタか」
「助手よ! これはぜひ買うべきではないだろうか!?」
 目をきらきらと輝かせて、晶葉がそうおねだりする。
「そうだな。買っていこう。すみません、このケーキをひとつ」
 まるで新しいおもちゃを買ってもらった子供のように目をきらめかせながら、晶葉は手提げ袋に入れられたケーキを受け取る。
「助手よ! 素晴らしいケーキをありがとう!」
「ふふ、大はしゃぎだな」
「まさかこんなに優れたデザインのケーキがあるとはな! 助手、一緒に早く食べよう!」
 と、晶葉がはしゃいだ時、二人はある重大な事実に気がついた。
 ……どこで食べよう。
「晶葉、うち、来るか?」
「あ……あぁ。そうさせてもらおう」
 晶葉はプロデューサーの手をぎゅっと握り、赤くなった頬がばれないように、少し顔を伏せながら歩いた。

 手を洗って、二人でソファへ腰かける。
 フォークを握り、猫のような口角をしながら、ケーキが切り分けられるのを待つ晶葉の姿は、まるで小さな子供のようだ。
「ほら、晶葉のにはサンタを乗せてやる」
「ありがとう! いただきます♪」
 晶葉はブッシュ・ド・ノエルをフォークで小さく切り分け、口へ運ぶ。
「んっ……♪」
「どうだ、うまいか」
 夢中で何口も食べてから、口の端に茶色いチョコクリームを付けながら、晶葉が言った。
「うん、うまいぞ!♪」
 彼女の満面の笑みに、プロデューサーの胸がきゅっと小さく音を鳴らす。
「あっ」
 指で彼女の口元を引き、キスをした。
「ごめん、かわいくて」
「き、君はいつでも突然なのだ」
 晶葉が口元を手で隠しながら、視線をそらす。
 でも、今夜はクリスマス。そして今の彼女には、魔法がかかっていた。
 晶葉は座りなおして、彼との距離を縮める。
「助手」
「晶葉」
 プロデューサーは晶葉の身体を抱き寄せ、キスをした。
「ん……」
 舌の先が甘い。
「んんっ、ちゅぷ……」
 甘くて、愛おしくて。うるんだ瞳に恋をして。
「ぷぁっ、あっ、んん……♪」
 頭の芯からとろけそうなキスを、二人は何度も繰り返す。
「ふっ、んふ……」
 お互いの手が、自然と下腹部へ伸びる。
 優しく撫でられるたびに、胸がドキドキと高鳴って、頬の赤みが増してゆく。
 プロデューサーは晶葉の熱い頬へキスをし、さらに強く抱き締める。
「好きだ」
「うん」
 プロデューサーは心のままの思いを、耳元でささやく。
「私も、す、好きだ……」
 彼の吐息を耳に受けた晶葉は、好きという一言さえすぐに言えなくなるほど、頭がぼうっとしてしまっている。
 幸せな混乱だ。
「んっ」
 そっと目を閉じ、少しだけ尖らせた唇を差し出す晶葉。
 プロデューサーは彼女の想いに応え、キスをする。
「んん、あっ……♪」
 プロデューサーの唇に、耳を挟まれる。
「あっ、んっ、んんっ……♪」
 晶葉はびくびくと身体を震わせ、かわいらしい声を上げる。
 耳たぶを前歯と舌で優しく圧迫され、耳の溝に舌を這わせられる。
 片方の耳は優しく手でふさがれている。
「だめっ、助手ッ……これ、んん……♪」
 彼の舌が這う音が、頭のなかで反響する。片方の耳をふさがれているせいだ。
 いやらしく響く水音と、そして愛しい彼が自分を興奮させようとしていること。
 それ自体に、晶葉は愛を、そして性的興奮を感じてしまっていた。
「ふあっ! ……はぁっ、はぁっ、はぁっ」
 視線がとろけ、快感の余韻に、晶葉の身体が小さく震えている。
「み、耳を舐めるなんて」
「嫌だったか?」
「嫌では、ないが……」
 晶葉は指で耳元を撫でながら言う。
「突然されると、びっくりする」
「分かった。じゃあ今度からは、次にすることを先に言うよ」
 天然なのか愉快犯なのか、こんなことを言いながら、プロデューサーがそう微笑む。
「君ってやつは」
 いつものプロデューサーらしさに、晶葉も少し困ったような微笑みを見せる。
 二人はお互いを抱き締めあい、キスをした。
 体勢を少しずらして、プロデューサーが晶葉の胸へ優しく触れた。
「晶葉、ここ、触っていいか」
「……うん」
 プロデューサーの胸へ顔を埋めていた晶葉が、短く返事をする。
 彼女の唇から発せられたわずかな振動が、彼の心をふわりと撫でる。
「あっ」
 十四歳にしては少し大きい胸を、彼の手のひらが優しく包む。
 それだけで二人の胸はドキドキと高鳴り、どこか寂しくなって、お互いを見つめ合い、キスをする。
 唇をついばみ、舌先を触れ合わせる。前歯の先を撫で、唇のふちを舐める。
 下着越しなのに、胸が熱い。
 ときめきを抑えたくてキスをしたのに、切なさがあふれて、身体の震えが止まらない。
 こらえ切れなくなったプロデューサーは、晶葉の耳元でささやいた。
「動かしても、いいか」
「うん」
 彼女の胸を包んでいる彼の手が、ゆっくりと円を描くように動き始める。
 それは優しく、じれったいほどに臆病な動きだったが、愛しい恋人にキスをされながらの愛撫は、何よりも幸せだった。
「はぁっ、はぁっ」
 晶葉の息が荒くなる。プロデューサーの首元を、彼女の甘く熱い吐息が撫でる。
「前、外すぞ」
「んっ……」
 ぷち、ぷち、と、プロデューサーが晶葉のかわいらしいパステルグリーンのブラウスのボタンを外す。
「あっ」
 ブラウスの前を開けると、かわいらしいクローバー柄のブラジャーが現れた。
「晶葉、かわいいよ」
「あ、ありがとう」
 自分でもなるべくかわいいものを選んだ、というかちひろに選んでもらったものだが、恋人に褒められるとやはり嬉しい。
 じっと見つめてくる彼に対して視線をどこへやったらいいのか分からず、晶葉が困った表情を見せる。
 すると、プロデューサーが晶葉の胸元へキスをしてきた。
「あっ……♪」
「晶葉のここ、おいしい」
「そんなわけあるかっ」
 心の底からそう思っているかのように見上げてくる彼の表情に、晶葉の顔も思わずほころんでしまう。
「んっ、あっ……」
 プロデューサーが何度も胸元へキスをする。目を閉じて、優しく。とても愛おしそうに。
 晶葉の頭を撫でながら、ちゅっ、ちゅっ、と小さく音を立てて、たくさんキスをしてくれる。
 そのたびに晶葉は、ドキドキと脈打つ胸の奥の音が聞こえやしないかと不安がったが、恋人のその優しい愛撫に、安らぎのような、それでいて下腹部がジンと疼くような、幸せな感覚を抱いていた。
 彼の手が、ブラウスの下からブラジャーのホックにかけられた。
「あっ」
「晶葉、外していいか」
 晶葉が頭を小さく縦に振る。
 プロデューサーは彼女の唇へキスをしながら、両手を晶葉の背中へ回し、『プチ、プチッ』とホックを外した。
 そのままプロデューサーは彼女からブラジャーとブラウスを脱がせてあげようとしたが、晶葉は彼にぎゅっと抱きついてきた。
「どうした、晶葉」
「見ちゃ、だめ……」
 晶葉の顔が、プロデューサーの胸へぐりぐりと押し付けられる。
「ごめん、まだ恥ずかしいよな。暗くするか」
 プロデューサーの胸へうずまっているかわいいツインテールの頭が、ぐいと動く。
 彼は彼女へ「前隠して待ってて」とうながし、部屋の照明を暗くした。
「その間接照明は、消せんのか。その、逆にいやらしいのだが……」
 両腕で胸を隠した晶葉の顔が、みるみる赤くなる。
「ごめんな。全部消せるけど、ここ、月明かりとか入らないんだ。だからこれで我慢してくれるか」
 晶葉は真っ暗な空間が苦手だということを知っていて、配慮してくれるプロデューサーの優しさにときめきながらも、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。
 それでも晶葉は、大きく息を吸って、吐いてから、隣に座ったプロデューサーへ向きなおった。
 そして、晶葉は自分からキスをした。
「んっ」
 意表を突かれたプロデューサーだったが、そのまま晶葉を優しく抱き締め、頭も撫でてやる。
「んふっ、んん……♪」
 自分から求めたというのに、晶葉の身体から力が抜けていく。
 プロデューサーはかわいい恋人のかわいらしい重みを感じながら、彼女の耳元でささやく。
「かわいいよ、晶葉」
「うぅ……♪」
 晶葉は照れ隠しに、プロデューサーへキスをする。
 しかし、キスをすればするほどに身体は熱くなり、胸の奥はキュッと締まっていく。
 唇を離し、プロデューサーが晶葉。
「晶葉の胸、見たい」
 ブラウスのボタンを外され、ブラジャーのホックも解かれた胸を隠す晶葉の腕が、わずかに固くこわばる。
 プロデューサーとは恋人の仲だし、彼のあそこも、自分のものも、すべてさらけ出した関係だ。
 しかしだからこそ、恥ずかしくて、でも恋人たちが愛を誓う、そんな夜だからこそ……。
 数瞬の間のあと、彼女はこう言った。
「少し、向こうを向いていてくれ。それと、優しく、してほしい……」
 ありがとう、と微笑みながら、プロデューサーは座りなおして背中を向ける。
 シュル……と、わずかに衣擦れの音を立てながら、晶葉がブラウスを脱ぐ。
「(これはこれで、いやらしくなってしまったな)」
 スタジオ外の撮影など、異性のいる空間で(簡易の仕切りの中で)服を脱いで衣装へ着替えることには慣れていたが、異性の前で、しかも恋人、さらに一糸まとわぬ姿へとなるのは本当に恥ずかしい。
 太ってはいないだろうか、胸は小さくないだろうか。先端の色は濃くないだろうか、垂れてしまってはいないだろうか。彼は……私のことを、嫌いにならないだろうか。
 そんなことを考えながら、晶葉はブラジャーから腕を外す。
「助手よ、こちらを向いてもいいぞ」
 プロデューサーは晶葉の方へ向きそうとしたが、
「ま、待て! やはり助手も、上を脱いでくれ……」
 と、晶葉が恥ずかしがった。
「ふふ、分かった」
 晶葉へ背中を向けたまま、プロデューサーがシャツのボタンを外し、下着を脱ぐ。
 今まではスタジオで大道具などを運ぶ筋肉質な男性と比べて、プロデューサーは華奢な男性だと感じていたが、こうして脱がせて見てみると、意外にも背中が大きく頼れる男性だったと気付く。
 そして彼の背中へ浮き出た肩甲骨を見た晶葉の胸に、一瞬、ときめきが走った。
「晶葉、これでいいか……んっ」
 プロデューサーの背中に、ふわりと柔らかく、温かいものが触れる。
「晶葉」
「な、なかなか鍛えているようだな」
 晶葉がプロデューサーへ抱き着く。
 何も着ていない裸のままの晶葉の胸が、同じく裸のプロデューサーの背中へ押し付けられる。
「まぁ、荷物とか運ぶこともあるからな」
 胸へ回された晶葉の手を、プロデューサーが優しく撫でる。
 晶葉はピクンと小さく身体を震わせ、赤く熱を持った頬を、彼の首もとへ置く。
「助手、助手は、恋人の胸が小さかったらイヤか?」
「愛しい恋人の胸なら、どんな大きさでも歓迎だ」
「その、先っぽの色がピンクじゃなくてもか?」
「俺はそっちの方が好きだ」
 晶葉がぷっ、と吹き出す。
「君の性的嗜好が特殊で助かった」
「だけど、恋人に関しては自信を持っているからな」
 彼の口から自然に出た言葉に、晶葉の胸は再び強く鼓動を打つ。
「好きだよ、晶葉」
「私も……君のことが好きだ」
 プロデューサーが軽く振り向き、彼の肩越しに身を乗り出した晶葉が、その唇にキスをする。
「晶葉、見せてほしい」
「あぁ、わかった……」
 晶葉が彼から身体を離し、プロデューサーがゆっくりと彼女の方へ向きなおる。
 するとそこには、二の腕で胸を隠そうとしながらも隠しきれず、逆に胸が寄せられる形で強調されている胸をもじもじとさせている晶葉がいた。
 その胸は、彼女が言うようなものではなく、むしろ、十四歳の少女にしては少し大きく、形も色もきれいな、美しいものだった。
 プロデューサーが晶葉の頭を撫でる。
「晶葉、きれいだよ」
「お、お世辞はいいんだぞ」
「そんなこと、晶葉に言わないさ。本当に綺麗だ」
「うぅ」
 目を閉じ、晶葉がキスを求める。
 プロデューサーは彼女の首元へ、優しくキスをした。
「あっ、そこ、ダメ……ん、んんぅ……!」
 桃色をした晶葉の胸先が、ピンと張り詰め、ふるふると震える。
 何度も何度も繰り返されるキス。
「ん、あっ、やめ……!」
 自分でも知らなかった、感じてしまう場所。
 恋人にぎゅっと抱き締められながら、首元や胸元への吸い付くようでいて優しいキスが、こんなにも気持ちいいだなんて。
 晶葉はそう感じながら、やめてほしいはずなのに、彼の背中へ腕を回し、強く抱き締める。
「んっ、晶葉……」
「いや、その、なんだか少し、寂しくなっただけで」
 さみしがり屋な唇に、プロデューサーはキスをしてやる。
「んっ……もう、大丈夫だ」
「じゃあ、ここにキスしても大丈夫か」
 プロデューサーが晶葉の胸へ視線を投げる。
 すると晶葉が、抱き着きながら彼の胸へ額を擦りつけてきた。
「……優しく、してくれ」
 晶葉が少し潤ませた瞳で、プロデューサーを見上げる。
 その瞳が愛おしくて、プロデューサーは晶葉にキスをした。
 そして、口元、頬、首、胸元へとキスをしていく。
「んっ、あっ」
 形がよく柔らかな丸みを見せる乳房を左手で持ち上げ、乳首を軽く擦ると、晶葉が悩ましい吐息を漏らす。
「く、ふぅぅ……♪」
 先端へ軽くキスをし、そのまま口に含む。
「ふあっ」
 舌先でつつき、乳輪を舐める。
 晶葉の身体がぴくぴくと反応し、少しずつ汗ばんでくる。
「じょ、助手よ、うぅ」
 ちろちろと焦らすように先端を刺激していると、充血し、ぷっくりと乳首が勃起してくる。
「晶葉のここ、おいしい」
「ばかっ」
 晶葉が唇を尖らせ、そっぽを向いてしまったので、ごめんごめんと、プロデューサーが頭を撫でてやる。
「変なことを言わないでくれ、ただでさえ恥ずかしいのに」
「ごめんな。晶葉がかわいくて」
 晶葉の頭を優しく撫でながら、プロデューサーがキスをする。
 そのまま乳房を小さく揺らし、乳首を優しく擦ると、口づけをしている晶葉の口の端から、熱く甘い吐息が漏れ出た。
「あっ、くぅう、んっ……♪」
 愛しい恋人に頭を撫でられるだけで、キスをされるだけで、とても幸せなのに、今は胸も気持ちよくなっている。
 瞳を閉じ、その幸せを噛み締め、晶葉は彼へ身を委ねる。
 すると、まぶたの裏へ小さな電流のようなものが走った。
「んッ……!」
 プロデューサーの唇が、乳首を甘く噛んでいる。
 唇の裏から歯を立て、乳首を挟む。そのまま左右にコリコリと転がし、柔らかな圧迫を伝えている。
「それッ、だめッ……!」
 眉間にしわを寄せ、晶葉が喘ぐ。
 呼吸が荒くなり、身体の芯が熱くなる。
 もじもじと太ももを擦り合わせながら、晶葉は快感の波に悶えている。
「はぁッ、はぁッ」
 もう片方の乳房も、柔らかく揉まれていた。
 大きく撫でるようにされたり、乳輪を指先でいじらしく刺激される。
 指先で背中をなぞるように撫でられる。ゾクゾクとした感覚が走り、呼吸が乱れ、さらに感じてしまう。
 彼の口に含まれ、唾液に濡れた舌で刺激され続ける乳首は、痛いほどに勃起し、迫りくる快感を敏感に伝えてくる。
「助手ッ……あぁッ」
 晶葉の太ももに、彼の膨れ上がった何かが当たっている。
「(私の身体で、興奮しているのだろうか……)」
 自分がプロデューサーを興奮させているのだと感じると、晶葉の胸へ恥ずかしいような、愛しいような気持ちが湧き上がり、漏れ出る嬌声がさらに甘いものへと変わっていく。
「だめッ、んんぅ……♪」
 自分でも、こんな声を出してしまうのが不思議なくらい、晶葉は感じていた。
 両足の間から、汗が噴き出ているような感覚がある。
 いや、違う、この感覚は……。
 晶葉はそれに気付いたが、『触ってほしい』と言うこともできず、彼にキスを求めた。
「キス、して」
 舌を絡ませ、身体を密着させる。
 汗ばんだ肌がお互いをさらに近づけ、熱い体温を伝え合う。
 太ももへ触れる彼の勃起が、ぴくぴくと脈打っている。
 晶葉はそれを見つめ、それとなく太ももで刺激してみた。
「んっ」
 プロデューサーが小さく反応し、晶葉へ微笑みかける。
「晶葉、晶葉のそこも」
 そう尋ねられた瞬間、晶葉は照れ隠しのキスをした。
 そして、精いっぱいの勇気で、彼の手に触れ、自らの股間へ導く。
「痛かったら、すぐに言うんだぞ」
 プロデューサーの優しい言葉にときめきながら、晶葉はこくんとうなずく。
 彼の中指が、柔らかくショーツのクロッチへ触れる。
「あっ」
 晶葉の既にクロッチは湿っており、彼の指は、彼女の秘貝へ布越しとは思えない刺激を与えた。
「んぅ」
 プロデューサーは触れているところを見せて怖がらせないよう、彼女の頭を撫でながら、優しくキスをしてやる。
 クロッチから熱い水蒸気が立ち上り、彼の指さえも湿らせる。
 晶葉の太ももはふるふると小さく震え続け、いじらしい刺激を受け止め続けていた。
「晶葉、脱がしていいか」
 プロデューサーが晶葉から唇を離してそう尋ねると、彼女は小さくうなずいた。
 彼は晶葉の腰を浮かせ、ショーツをずらす。
 幾重にもまくれてシュシュのように丸まったショーツが、晶葉の足から脱がされた。
「触る、ぞ」
 プロデューサーが晶葉の太ももを撫で、股間へと手を伸ばす。
 中指が女の子の小さな穴から秘芯へと撫で上げる。
「んぁあッ……!♪」
 晶葉が口を抑えて、大きな嬌声を漏らす。
「大丈夫か? 痛かったか?」
「い、いや、少し驚いただけだ……」
 真っ赤な頬をした晶葉が、視線をそらしながらそう答える。
「そうか、じゃあ続けるぞ」
 くちゅ、くちゅり。
 小さな水音を立てながら、彼の中指が晶葉の濡れた股間を滑る。
 熱く、ぬるぬるとした分泌液が、お互いを濡らしている。
「あッ、あぁ」
 晶葉の胸はどきんどきんと脈打ち、彼の刺激と同調する。
 そのたびに下半身からの快感は大きく迫り、嬌声を抑える手も震える。
「痛くないか」
「うん」
 女の子の小さな入り口を、何度も何度も擦られる。
 そのたびにふわふわとした快感が渦を巻き、今にも溺れてしまいそうになる。
 奥からはぬらぬらとした分泌液がとめどなくあふれ出てくる。
「んんッ、ん、あッ」
 プロデューサーの口元へ唇を近づけ、キスをねだる。
 舌先と舌先をつつきあい、絡ませ、唇を重ねる。
「はん、んんッ、ふうぅ」
 首の角度を変え、唇をむさぼる。
 恋人に秘所を刺激されながらの、熱いキス。
 快感から注意をそらしたくてキスをしたり、抱き締めたりしたのに、さらに気持ちが集中し、感じてしまう。
 無意識のうちに腰が動き、強く閉じられた太ももは彼の手を圧迫する。
 まだ浅い位置なのに、ぎゅううと締め付けるようになってしまう。
「晶葉、かわいいな」
「うぅっ♪ 気持ち、いい……」
「好きだよ。かわいいよ」
「ッ……♪」
 幸せな言葉をささやかれ、胸も、心も、大切なところも、すべてが感じてしまう。
 晶葉は少し前までは自慰にさえ罪悪感を感じていたが、今は、恋人との素敵なスキンシップということを、身体を通して知っている。
 もっと、もっと君が欲しい。私の名前を呼びながら、もっと、たくさん触れて欲しい。
「助手……」
「どうした」
「好き、だ……」
「ふふ。晶葉、俺も好きだよ」
 君に触れたい。
 たくさんの愛を受けた晶葉の心は、次に彼へその愛を返そうとしていた。
「ん、じょ、しゅ……」
 晶葉の細指が、おずおずと彼の膨らみへ触れる。
「んっ」
 ズボンの上から、指先で硬い盛り上がりをなぞる。
 ゆっくりと撫でるたびに、彼の呼吸が少しずつ荒くなる。
「気持ち、いいか?」
「あぁ、すごく……」
 愛しい恋人が、自分の愛撫で感じてくれている。
 とても幸せなその状況に、晶葉は微笑みながらキスを返す。
「ズボン、脱がしてしまってもいいか?」
「あぁ」
 彼のベルトを外し、ホックを開け、ジッパーを下げる。
 すると、今にもはちきれんばかりに膨らみきりパンツを押し上げる、彼のものが現れた。
「う……」
 パンツ越しでも十分に威圧感のある大きさに、晶葉は思わず唾を飲む。
 指先でちょん、と触ると、ぴくん、とそれは跳ねた。
「んっ」
「さ、触るぞ……」
 布越しに彼のものを握る。
 びくびくとした脈動と熱が伝わり、彼が本当に自分で興奮してくれたのだということが分かる。
「痛く、ないか?」
「大丈夫だ」
 彼のものを握った手を、ゆっくりと上下させると、プロデューサーの呼吸が乱れ、頬が紅潮する。
 アイドル大ベースボール大会で握った金属バットほどの太さと、硬さにおののきながらも、彼が自分の愛撫で感じてくれているという事実に、晶葉は興奮を覚えていた。
 愛撫を続けながら、彼にキスをする。
「んっ、あっ」
「ん、んんっ、ふうっ」
 離してしまっていた彼の手も、再び晶葉の股間へと伸びる。
「あっ、あぁっ」
 晶葉が身体を丸めながら喘ぐ。
 彼のものを触りながら、感じてしまうところをいじられる。
 お互いの秘所をまさぐりながらのキスは、どこか背徳的で、そして深い興奮を、大胆さをもたらすものだった。
「ん」
 晶葉の手が彼のパンツをめくり、睾丸の下までずり下げる、
 すると、やはり大きな秘棒が現れ、晶葉の胸がドキンと鳴った。
「直接……触るぞ」
 晶葉のかわいらしい手が、たくましい彼のものを柔らかく包む。
 中学生らしい小さな白手が、大人らしいペニスを握っている。
 そのままゆっくりと手を上下させ、彼のものを刺激する。
「助手よ、痛くないか?」
「大丈夫」
 プロデューサーが優しく微笑む。
 が、そこにいつものような余裕さは感じられず、彼もかなり興奮していることが見てとれた。
 しごく速度を少しだけ早める。
 すると彼のものが反応し、手の中でぴくぴくと跳ねた。
「晶葉、気持ち、いい……」
 晶葉の股間を刺激する彼の指が、入り口より少し奥の、ザラザラとしたひだの部分を刺激する。
「んんっ……!」
 いわゆるGスポットと呼ばれる部位に触れられ、晶葉は思わず声を上げた。
 クリトリスから受けるような鋭い刺激ではないが、重く、深いその快感は、彼女の興奮を確かに高めていく。
 下腹部がうずき、泣き出したくなるような切なさと、彼からの愛が同居する。
 そんな不思議な心の内を、晶葉は唇へ込めて彼に伝える。
「んっ、ちゅっ、ちう、ふっ、ちゅう……」
 プロデューサーの指が膣口から引き抜かれ、硬く勃起した秘芯へとあてがわれる。
「あぁッ……!」
 愛液に濡れた指をクリトリスの上でぬらぬらと動かされ、晶葉は激しい嬌声を上げ、その快感に眉をゆがめる。
 ちゅく、ちく……と水音を立て、彼の指が秘芯の上を、下を、左右を、円を描くように刺激する。
「だッ、めッ」
 先ほどとは違う種類の快感が下半身から押し寄せ、受け止める間もなく、晶葉はその波に呑まれていく。
 全身がびくびくと震え、力が抜けてしまい、握っていた彼のものからも手を離してしまう。
「はッ、はぁッ」
 息が荒くなり、体温がさらに上昇する。
 プロデューサーへしなだれかかり、晶葉は甘い吐息を彼の耳元で漏らし続ける。
「好き、好き……」
「好きだよ。晶葉」
 中指と親指で軽くつままれ、くりくりと指の間で肉芽を転がされる。
「ん、んふッ」
 自分でする時とは違う愛撫をされ、驚きと快感を覚え、そのたびにたくさんの愛蜜を漏らしてしまう。
「あっ、だめッ」
 プロデューサーの唇が胸元を優しく吸う。
 そして乳房を舌先で撫でられ、先端を唇に挟まれる。
「あぁッ」
 クリトリスと乳首を刺激され、脱力した晶葉の身体はもはや、されるがままになってしまう。
 プロデューサーは彼女の小さな身体を支えつつ、敏感な部位を愛撫する。
 反射のせいか、ぴっちりと閉じられた彼女の太ももが彼の手を圧迫し、身体をぶるぶると震わせる。
「じょ、しゅ……」
 力なく晶葉がささやく。
 その声に反し、彼女の身体はそのこわばりをさらに強めていく。
 彼を抱き締める手は痛いほどに握りこまれ、太ももはこれ以上ないほどに閉じられ、乳首は硬く勃起している。
「気持ち、あぁッ……!」
 玉のような汗が額から落ち、彼の身体を濡らす。
 晶葉の表情からは一分の余裕さえも見られなくなり、その甘い嬌声はもはや抑え込むことさえもできなくなっている。
「じょ、助手ッ……! それ、だめだか、らぁッ」
「晶葉、大丈夫だ、最後までしよう」
「最後ッ、ってぇッ、ふぅぅ……!♡」
 晶葉の身体中が震え、呼吸が乱れる。
 彼の指と口は間断なく刺激を与え続け、彼女を絶頂へと追い詰める。
「だめッ、怖いッ、助手ッ、私ッ……!♡」
「大丈夫、俺が全部受け止める。晶葉、俺は晶葉が好きだッ」
「くッ、ああッ……!♡」
 迫り来る快感の大波に、晶葉は歯を食いしばり、最後の抵抗を試みる。
 しかし、抵抗むなしく、ついに晶葉はその時を迎える。
「あッ、あッ、あああぁッ……!♡」
「晶葉、晶葉ッ!」
 彼の指が、完全に充血したクリトリスを弾き、彼の歯が、痛いほど勃起した乳首を甘く噛んだ。
「いやッ、あぁぁあッ、あぁぁあッーーー……!♡」
 晶葉の全身が激しく震え、硬直し、激しい嬌声を上げる。
「ああッ、ふッ、ああッ……!♡」
 晶葉の手が彼の二の腕を激しく握り込む。
「ふッ、ふぅぅッ♡」
 噛み締められた歯の間から吐息が漏れ、強く閉じられたまぶたの裏に、ぱちぱちと電流が走る。
 絶頂の間にもなお、彼の指はやわやわと刺激を続け、その絶頂を続けさせている。
「はぁッ、くッ、あぁッ……♪」
「晶葉」
「んッ」
 彼に名前を呼ばれただけで、また強く感じてしまう。
 そして秘芯を押し込まれるようにして刺激され、晶葉は軽く絶頂をする。
「んあぁッ……!♡」
 プロデューサーが指を口を離し、びくびくと身体を震わせる晶葉を抱きとめる。
「んッ、ふッ……」
 長い間続いた絶頂がようやく落ち着き、こわばっていた晶葉の身体から力が抜ける。
「頑張ったな」
 プロデューサーが彼女の頭を撫でる。
 晶葉は大きく息を吸い、吐いて、呼吸を整える。
「ちょっと、怖かった、ぞ……」
「ごめんな。晶葉に気持ちよくなって欲しくて」
 ほてらせた頬を、彼の肩へ擦りつける。
「うん……大丈夫」
 安心感からか、晶葉は大きくため息をついた。
「それと、気持ち、よかった……」
 身体の震えが落ち着くまで、二人は抱き合い、呼吸を合わせていた。
 しばらくすると、晶葉はようやく自分の喉がカラカラに乾いてしまっていることに気づいた。
「助手よ、喉が渇いただろう。水を持って」
 彼から身体を離し、晶葉はテーブルの上のグラスを取ろうとした。
 が、うまく身体に力が入らず、ソファから転げ落ちそうになってしまう。
「おっと」
 プロデューサーが晶葉の身体を支える。
「うぅ、すまん」
「ごめんな、そこまで体力使わせちゃって」
 プロデューサーが少し困ったような、心配した表情をしながら、晶葉を両腕で抱き上げる。
「う、うわわっ!」
 いわゆるお姫様抱っこをされ、晶葉は困惑する。
「あっちで少し休もう」
「ちょっ、ちょっと降ろしてくれ、助手、恥ずかしいっ」
 晶葉はじたばたと抵抗してみるが、意外とたくましい彼の腕からは逃れられなかった。
「いいじゃないか、ここには俺たちしかいないんだから」
 プロデューサーが晶葉へキスをする。
「うぅ」
 ずるい、と言ったような表情をして、晶葉はおとなしく寝室へと運ばれていった。

「飲めそうか?」
「いや、もう少し、休んでからにする……」
 晶葉はまだ息絶えだえといったようすで、起き上がれそうにない。
 するとプロデューサーが水を口に含み、晶葉へ唇を重ねる。
「んっ、んく、こくっ……」
 突然の口移しに晶葉は少し驚いたが、彼の行動にはもう慣れっこだった。
「んっ……ぷはっ。あ、ありがとう」
「どういたしまして」
 プロデューサーも少し水を飲み、晶葉の隣へ入り、頭を撫でてやる。
 晶葉はまぶたを閉じて、気持ちよさそうにまどろむ。
「最近よく聞くけど、女の子は頭を撫でられるのって、本当はあんまり好きじゃないのか?」
 プロデューサーがふと思い出したことを尋ねる。
「そうだな、いきなりされたら嫌かもしれんな」
「そ、そうか」
 プロデューサーの晶葉を撫でる手が止まる。
「あっ、違うぞ! す、好きな人にされたら、むしろ、嬉しいぞ」
 勘違いをさせるような言い方をしてしまったと、晶葉が焦る。
「つまり、その、助手になら、突然されても、すき、だから」
 視線をそらした晶葉が、たどたどしく言葉を出す。
 にこりと微笑んだプロデューサーが、先ほどよりも大きく晶葉を撫でる。
「そうか♪」
 撫でて、キス。
 キスして、撫でる。
「や、やめろ、脳細胞が死ぬ……♪」
 ようやく熱が下がってきたはずの晶葉の体温が、再び上昇してしまう。
 晶葉からもキスを求める。
「ちゅ、ちゅうちゅっ♪ んっ、ん……♪」
 プロデューサーが晶葉を抱き寄せ、ぎゅっと抱き締める。
「んっ」
 晶葉も彼を抱き締め、足を絡めさせて触れ合う。
「晶葉……」
「助手……」
 見つめあい、キスをする。
 頭を撫であい、またキスをする。
「んっ、あっ……♪」
 凪のような心地いい波の、幸せな時間が続く。
 胸の高まりが再び熱を帯びてきた頃、晶葉がこう尋ねた。
「そういえば、助手が最近何か悩んでいるようだったが、何かあったのか?」
 少し間を置いて、プロデューサーが答える。
「あぁ、クリスマスプレゼントが決まらなくてな」
「……そういうことだったのか!?」
 あっけにとられ、晶葉の口があんぐりと開いたままになる。
 あれだけちひろと相談して、勇気も出したのに、もう解決していたとは。
 それでも、結果的にはこうなれたのだから、よしとしよう。うん。と、晶葉は彼からクリスマスプレゼントにもらったイヤーカフを撫で、思う。
「晶葉、似合ってるよ」
「ありがとう」
 プロデューサーが微笑みながら晶葉を撫でる。
 しかし、彼を見つめる晶葉は少し不満げだ。
「どうした、晶葉」
「助手よ、それは私が言うべきことだ」
 予想外の返答に、プロデューサーは小首をかしげる。
「君が今している目は、あの時と同じ目だ。きっと、何かを悩んでいるに違いない」
 晶葉が口を尖らせて言う。
 いわゆる『ジト目』に、磨きがかかる。
「そ、そうか? 俺は今特に、何も……」
 プロデューサーが視線をそらし、絡めていた足を離そうとする。
 が、晶葉の足にがっちりと固められてしまい、離せない。
「ちゃんと言わなければ、離さんぞ」
 晶葉がじぃ、と彼を見つめる。
 彼女の気持ちを悟ったプロデューサーはついに観念し、口を開いた。
「わ、分かった、言うから。そうだな、晶葉の体力が、その、回復したかなぁ、と……」
「おかげさまで大丈夫だ」
 晶葉が彼の頭を撫でてみせる。
「だから、その、晶葉と続きが、したい」
 思春期の男子中学生のように、プロデューサーが頬を赤くして言う。
 遠回しに『君が欲しい』と言われた晶葉も、予想はしていたのに、顔を赤くしながら驚いてしまう。
「つ、続きとは、その」
「つまり、だな」
「赤ちゃん、つくるやつ……」
「そうだ……」
 二人の間に、少しの沈黙が訪れる。
 そして、お互いが同時に口を開いた。
「晶葉っ」
「助手っ」
 晶葉がこう続ける。
「私は、その、私なら、大丈夫だぞ」
 だんだんと小さくなっていく声で、晶葉が言った。
「それって、していいって、ことか?」
「……女の子に二度も同じことを言わせるんじゃないっ」
 晶葉がプロデューサーの胸へぽふん、と顔を埋める。
 彼女の精いっぱいの表現に安心し、いつもの表情に戻ったプロデューサーが、晶葉の頭を撫でる。
「晶葉、ありがとう。すごく嬉しいよ」
 晶葉が彼の胸へ額をぐりぐり、すりすりと擦りつける。
 プロデューサーが晶葉の頭や肩を撫で、緊張をほぐす。
「晶葉」
 キスをし、強く抱き締める。
 汗ばんだ肌が、気持ちいい。
 そして、彼の手が晶葉の秘所へ触れる。
「んっ」
 ぴくん、と彼女が肩を震わせて反応する。
 先ほどの愛撫からは少し間を置いてしまったが、こちらに来てからしばらく抱き合っていたおかげで、潤いは保たれているようだ。
「晶葉、怖くないか。大丈夫か」
 彼がそう尋ねると、晶葉は顔を上げて答えた。
「助手はきっと優しくしてくれるって、知ってるから」
 心を決めたように、晶葉が彼の瞳を見つめる。
「分かった。ありがとう」
 お互いに、ぎゅっと身体を抱き締め合う。
 高鳴る鼓動と緊張で、そんなはずはないのに、心はとても落ち着いていると、二人でいるとそう思えてくる。
 プロデューサーが晶葉のおでこにキスをし、身体を離す。
「それじゃあ、晶葉、仰向けになって」
「うん」
 腕で胸を隠した晶葉が、ころん、とベッドへ仰向けになる。
 プロデューサーがベッドサイドの棚からコンドームを取り出し、自らのものへしっかりと着けた。
「晶葉」
 まだ少し緊張している晶葉へ、プロデューサーが何度もキスをする。
「んっ、んっ……♪ 助手よ、そんな寂しそうな子犬みたいな顔をしなくても、私は大丈夫だぞ」
 晶葉が白い歯を見せ、にかっ、と笑ってみせる。
「ふふ、そうか。安心した」
 二人の緊張の糸がほぐれていく。
 抱き締めあい、お互いに耳元でささやく。
「晶葉、好きだ」
「私も、君が好きだ」
 甘く深いキスをし、お互いを確かめ合う。
 晶葉の隣で横になっていたプロデューサーが、彼女へ覆いかぶさる形になる。
 晶葉の喉が、ごくん、と鳴る。
「晶葉、痛かったらすぐに言うんだぞ」
「わかった」
 再び緊張しているような表情へ戻ってしまったプロデューサーを見て、晶葉が優しく微笑み、キスをする。
「ふふ、私なら大丈夫だ。だから……」
 初めてで、怖くて、今にも逃げ出したいけれど。
 それでも、心に決めた人を受け入れることからは、逃げ出したくない。
 何かを共に成し遂げることの尊さを教えてくれた、そんな彼を、愛しているから。
 晶葉は、微笑みの中に強い決意を秘めていた。
「晶葉っ……」
 プロデューサーの硬く熱いものが、晶葉の秘界へ触れる。
「あっ」
 そのまま先端でくちゅくちゅと膣口を刺激する。
「晶葉、挿入れるぞ」
「うん、来て……」
 プロデューサーが腰に力を入れ、ほんの少しだけ晶葉の中へ入る。
「あッ……!」
 晶葉は身体をよじり、歯を食いしばる。
 プロデューサーが腰を止めた。
「大丈夫か、しばらくはこのままでいるから」
「ううん、大丈夫だ。少し驚いただけだ」
 晶葉が顔をくしゃりとさせて微笑んでみせる。
 しかし、眉間に寄せられた小さなしわは隠せない。
 プロデューサーはできるだけ腰が動かないように注意しながら、彼女の頭を撫でる。
「晶葉」
 プロデューサーが晶葉の額の汗を拭き取ると、彼女はこう答えた。
「ありがとう。それと、ぴりぴりもなくなってきた」
 呼吸が落ち着き、玉のような汗も引いてきている。
「わかった。もう少しだけ、やってみよう」
 再びプロデューサーの腰が動く。
 傍から見れば進んでいることが分からないほど遅い動きだが、少しずつ、彼は晶葉の中へ入っていく。晶葉も、彼を受け入れていく。
「あッ、んんッ……あッ……!」
 まぶたをぎゅっと閉じ、晶葉が痛みと戦う。
 二人は幾度かの休憩を繰り返し、亀頭が全て挿入りそうなところまで腰を進めた。
「晶葉、大丈夫か」
「ん、大丈夫だ。けど」
 晶葉が唇を噛み、視線をそらしてから、再びプロデューサーを見つめる。
「手、繋いで欲しい……」
 晶葉が両手を前へ伸ばす。
「分かった」
 プロデューサーが晶葉の手を握る。
 いわゆる『恋人繋ぎ』だ。
 そして、そのまま晶葉へ倒れこむ姿勢になる。
「ちゅーしながら、して……?」
 潤んだ瞳で、晶葉が言った。
 二人の唇が触れ合う。
 彼の腰が動く。
 彼女の身体は一瞬こわばったが、彼の手を握り、彼もまたそれに応える。
 舌先を絡め、瞳と瞳で見つめ合う。
 彼がさらに腰を進めると、ぷちり、と、何かが弾けたような痛みが彼女の身体へ走った。
「んッ、んんッ……!」
 晶葉の身体が強くよじれる。
 思わずプロデューサーの手を激しく握り込んでしまったが、彼は何も言わずに、彼女の痛みを共有しようとした。
「はッ、はッ、はッ」
 強い痛みは引いたが、圧迫感のような、胸苦しい感覚は消えない。
 プロデューサーは、晶葉の呼吸が落ち着くまで頭を撫で続けている。
「じょ、しゅ……私……」
「あぁ、一番痛いところまで挿入った。よく頑張ったな、晶葉」
「そ、そうか、私、助手と……♪」
 気持ち良い感覚とはまだまだほど遠いが、愛しい恋人と身体を重ねられた嬉しさで、晶葉の胸はいっぱいだった。
 悲しい感情なんて一分もないはずなのに、晶葉の目尻から涙が一筋こぼれた。
「あ、あれ、おかしいぞ」
「晶葉」
 プロデューサーがキスをする。
「晶葉、好きだ。晶葉と一緒になれて、本当に嬉しい」
 晶葉も彼へキスを返す。
「私も、私も君が好きだ。嬉しい。ふふ、嬉し泣きなんて、初めてした」
 晶葉が涙を拭って微笑む。
「キス、しよう」
「ん……♪」
 唇を重ね、繋いだ手を握り込む。
 しばらくののち、ヒリヒリとした痛みはまだ残っているが、 息苦しさは少しずつ和らいできた。
「助手よ」
 晶葉が唇を離す。
「動かしても、いいぞ」
「あぁ。痛かったら言うんだぞ」
 プロデューサーが、再び腰に力を入れる。
「んっ……は、あぁ……」
 深く息を吐き、晶葉が耐える。
 脂汗は少しずつ引き、彼が腰を進めるたびに、晶葉の胸に不思議な充足感が広がっていく。
「晶葉、全部ッ……挿入った」
「そう、か……嬉しい……♪」
 心にあたたかい。彼の優しさのように。
 晶葉は微笑みながら、プロデューサーを撫でてやる。
「あ、晶葉」
「ふふ、助手が頑張ってくれたから、私も頑張れたんだ。だからいっぱい撫でられろ♪」
 晶葉がにかっ、と微笑む。
 健気で愛しい彼女の目元へ、プロデューサーがキスをする。
「ありがとう。晶葉」
 ぎゅっと抱き締め、深く繋がったまま、時を過ごす。
 身体の中も外も、彼に、彼女に、抱き締められている。
 幸せで、胸が苦しい。
「助手、動いても大丈夫だぞ」
 抱き締め合ったまま、晶葉が微笑む。
「うん。あと俺、ちょっと早いから、がっかりしないでくれ」
「何言ってる。えっちはそういうものじゃないだろ。たぶん」
 晶葉がプロデューサーの額へキスをする。
「だから、私の中でたくさん……その、感じてくれ」
 途中まで言ってからその大胆さに気づき、晶葉が頬を赤くして視線を泳がせる。
「晶葉ッ」
 晶葉を強く抱き締め、プロデューサーが少しずつ腰を動かす。
「んっ……あっ」
 肉壁がキツく、圧迫してくる。
 引き戻す瞬間、ゆっくりと動かしているはずなのに、卑猥な水音が、薄明かりの寝室に響く。
「あっ、ん」
 最奥まで進めると、晶葉の口から小さく声が漏れた。
 腰を引くと、彼女の身体がぶるぶると震え、シーツを握った晶葉が、寂しそうにこちらを見つめてくる。
 ぬるぬるとした愛液がコンドームの表面を光らせ、潤わせている。
「じょ、しゅッ……」
 晶葉がキスを求める。
「んっ……♪」
 抱き締め、キスをし、舌を絡ませる。
 その間にもゆっくりと腰を動かし続け、射精感を高めていく。
「晶葉ッ……」
「んっ、あっ、好き、私っ、好きっ」
「俺も、晶葉が好きだッ」
 腰が震え、速度が高まる。
 苦しさを和らげるために、彼女の身体を撫でる。
「んん……♪」
 小さく震える晶葉の手が、プロデューサーを強く抱き締める。
「私のことはっ、気にしないでいいからぁっ、だからぁ、最後っ、まで……!」
「晶葉ッ、ごめんッ」
 肌と肌がぶつかり合い、水音が激しくなる。
 晶葉の声は小刻みに上げられ、彼の絶頂が近いことを予感させる。
「晶葉ッ、俺ッ、もうッ……!」
「来てッ、たくさんッ、ああッ……来て……!」
 二人は強く抱き締め合い、汗ばむ肌が密着する。
 彼女の桃色の肉壁が、彼の硬く張った肉棒を擦り上げる。
「晶葉ッ、出るッ……!!」
「はッ、あッ……! ああッ……!!!」
 プロデューサーの腰がびくんと跳ね、最奥で精を放つ。
「んっ、はッ、んん……」
 痙攣する彼のものを通して、射精に至ったことが分かる。
 晶葉は彼が呼吸を落ち着けるまで、抱き締め、頭を撫でてやった。
「はぁッ、はぁッ……晶葉」
「助手……♪」
 キスをし、見つめ合う。
 いつのまにか繋がれていた手が、相手の感触を確かめ合っている。
「晶葉、気持ち、よかった……」
「ふふ、見れば分かるぞ♪」
 ゆっくりと引き抜き、プロデューサーが晶葉の横へ寝そべる。
 水が入ったボトルを手に取り、口に含み、彼が晶葉へ口移しをする。
「んっ、んくっ……ありがとう」
 晶葉が口を拭って微笑む。
「なんか、晶葉とこうして飲む水、うまいな」
「ふふ、そうだな」
 同じ枕に頭を乗せ、、天井を見つめる。
 身体はまだ熱く、掛け布団も剥いでしまっている。
 晶葉は優しく手を繋ぎ、彼が隣にいることを確かめた。
「助手、助手とできて、嬉しい」
「俺もだ」
 キスをして、微笑み合う。
「晶葉。疲れたり、悩んだりしたら、俺に何でも言ってくれ。できることは、全部したい」
 プロデューサーが晶葉の胸へ額をつける。
「頼りにしているぞ……♪ そしてそんな助手も、言いたいはちゃんと言うんだぞ」
「分かった。じゃあ」
 プロデューサーが顔を上げ、晶葉を見つめる。
「このまま、イチャイチャ、したい」
「ふふっ、かわいい奴め……♡」
 幸せな聖夜が、二人を包んでいた。


エピローグ

 ロビーでカードキーを受け取り、エレベーターのボタンを押す。
 様々な国籍の人間が乗り合う大型で最新型のエレベーターは、少しの振動もなく動き出した。
 外には様々なビルが放つ光が、美しい夜景を形作っていた。
 そして今、自分の横には、今日妻となったばかりの女性がいる。
 晶葉。彼女の名前だ。
「ふわ……」
 晶葉が小さくあくびをする。疲れたのだろう。
 それもそのはず。二人は仕事の合間をぬって今日のために入念な準備をし、様々なイベントもこなしてきた。
 そして明日の昼にはもう出国だ。相変わらず、忙しい日々を送っている。
 今日はゆっくり休もう。そう声をかけるつもりで、彼女の頭に手を乗せる。
「ん」
 晶葉は小さく声を出し、体を寄せる。
 二十歳を超えたとはいえ、やはり晶葉はまだ小さく、かわいらしい。
 それでも、アイドルやロボにかける情熱は変わっていない。
 シュウウゥ、とエレベーターが減速をし、目的の階に着く。
「エクスキューズミー」
 大きな体の同乗者たちの間を抜け、廊下へ出る。
 運よく角部屋が取れた。きっと夜景は綺麗だろう。
 部屋の鍵へカードキーをかざすと、ガチャ、と鍵が開いた。
 重く大きいドアを開けると、大きく開かれたカーテンの向こうに、やはり素晴らしい夜景が広がっていた。
「おぉ! いい部屋が取れたものだな!」
 晶葉がタタタ、と窓へ駆け寄る。
 ベッドの脇へスーツケースを置き、彼女の隣で外の風景を眺める。
「綺麗だな」
「あぁ」
 興味津々に何かを見つめる晶葉の瞳は、いつもきらきらとしていて、美しい。
 それが彼女の変わらない魅力の一つでもある。
「綺麗だ」
「そうだな」
「君が」
「い、いきなり何を」
 抱き寄せ、唇を奪う。
「ん、ふッ、んんっ……」
 晶葉の身体から力が抜け、こちらへしなだれかかる格好になる。
「晶葉、好きだ」
「私も、だ……」
 そのままベッドへ倒れこむ。
「晶葉。晶葉と結婚できて本当によかった」
「私も、同じ気持ちだ」
 薄く桃色にメイクされた晶葉の頬が、真っ赤に染まっていく。
 鼓動が高鳴り、彼女をもっと抱き締めたくなる。
「晶葉、したい」
「あぁ……しかし、ひとつ伝えておきたいことがある」
 なんだ、と尋ねる前に、晶葉が口を開いた。
「今日から、こどもつくるえっちにしたいんだが……どうだろう」
 真剣な顔をされたので思わず身構えたが、自分と考えていたことが同じで、なんだか面白くて、思わず軽く吹き出してしまう。
「あっ、今笑ったな」
「ごめんごめん。実は俺もそう伝えようと思っていたんだ」
「そ、そうだったのか……♪」
 晶葉の目が潤んでいく。
「晶葉、好きだ。ううん、愛してる」
「私もだ。愛しているよ、助手……いや、違うな。今日からは名前で呼ぼう。そう、君の名は」
 二人の新しい物語が、異国の夜へ融けていった。 

池袋晶葉とイチャラブえっちする本 第2章

アイドルマスター シンデレラガールズに登場する池袋晶葉とのイチャラブです。
千葉ーザム氏(@barzam154__)の池袋晶葉ツイートに影響されて書きました。

zamlog 池袋晶葉イチャラブビジネス新書をあなたが読むべき8つの理由

 

第1章はこちらです。


池袋晶葉とイチャラブえっちする本 第1章 - 杉流馬締と宇和島拓哉のTwitter

 

今回はえっちなシーンが長めなので、ぜひおちんちんをいじいじしながら読んでみてください。

(約1万8000文字)

                                        宇和島拓哉

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第2章

 

「晶葉ちゃん、それはまずいですよ」
「やはり、か……」
 ちひろはここ数週間、プロデューサーと晶葉の態度がなぜだかよそよそしくも親しいことに気付き、「そういえば」と、晶葉へこの前教えた『マッサージ』のことを聞いた。
 その話題を口にした瞬間、晶葉はビクンと飛び上がるように驚き、あたりを見回し、赤面し、事務所の隅へちひろを招いて、事の真相を話し始めた。
「私もいつか相談しようとは思っていたんだがな。こう、さすがに話しにくかったというか、あの時は舞い上がっていたし、自分から進んでしたことだし……」
 晶葉は取り調べでも受けているかのような表情を見せる。
 そんな彼女をあわれに思ったのか、紛らわしく教えてしまった自分にも責任があると感じたのか、ちひろは頬に人差し指を当て「うーん」とうなってから、話を進めた。
「それで、これからどうするつもりなんですか」
「どうする、と言われても」
 ちひろは体をぐいと晶葉に寄せ、耳打ちするように言う。
「好き、なんですよね?」
 その瞬間、晶葉の顔は再び真っ赤になり、
「べっ、別に……! いや、うむ……」
 と、うなずいた。
 晶葉は今まで特撮のヒーローやアニメのロボットへ恋のような、いや、憧れの気持ちを抱いたことはあったが、こうして実際に現実の男性へ魅力を感じたのは初めてだった。
 それゆえその気持ちを声に出して確認することは、なんだか自分が世間の『恋する女の子』になったようで気恥ずかしくて、プロデューサーのことはアイドルとロボ作りの夢を共に叶える『助手』であると考えていた。
「助手はよく働いてくれるし、その能力は私も認めている。だが、いや、だから、す、好きかと言われたら……首を横には振れないのだ」
 スカートのすそをぎゅっと握りしめながら、赤く染まった頬を隠すようにうつむく晶葉。
「うふふ、そうなんですね」
 ちひろが、何か懐かしむような目をしながら微笑む。
「だがあんなことになってしまってからは、助手とどう接すればいいのか分からなくて」
「そうですねぇ。じゃあ、こう考えたらどうですか。『ピンチはチャンス!』」
「ピンチはチャンス?」
 小首をかしげる晶葉に、ちひろはこう言った。
「そう。つまり、プロデューサーさんをデートに誘うんです」
「デ、デートぉ!?」
 目をいっぱいに見開き、晶葉は驚く。
「しーっ! 晶葉ちゃん声大きいですよ」
「す、すまない」
 晶葉が驚いたのにも無理はない。『どうやってプロデューサーとの関係を以前のように戻すか』という方法を聞き出していたつもりだったのに、『デートへ誘う』という、彼との関係をさらに進めてしまう一手を提案されたのだから。
「うふふ、驚かせちゃってごめんなさい。でもね、晶葉ちゃんはプロデューサーさんのことが好き。そして、晶葉ちゃんはプロデューサーさんのおうちへ行って、『そういうこと』をした。だったら、もうすることはひとつ」
 ちひろはピンと立てた人差し指を空中で踊らせながら、ニンマリとした表情を作って、晶葉へ話した。
「することは、ひとつ」
 晶葉がゴクリと喉を鳴らす。
「プロデューサーさんをデートに誘って、告白して、恋人同士になるんです♪」
「ッ……!」
 晶葉がいっぱいに見開かれた目をさらに開き、顔中を真っ赤にし、体中の毛を総毛立たせ、体をこわばらせる。
 瞬間、彼女の頭に恋人となったプロデューサーとのデート風景が映った。
(助手と恋人に!? それでは普段のお昼も、ちょっとした買い出しも、地方の仕事も、あれやこれも、ぜっ、全部デートになって……! いや、公私混同はいかん! し、しかし……)
 胸がドキドキと高鳴り、顔中が熱くなる。まるで初めてステージへ上がったあの時のように、口の中がカラカラに乾く。
 晶葉は江戸時代のからくり人形をモデルにした『茶運びロボ』からお茶を受け取り、一気に飲み干すと、初ステージの舞台袖で優しく励ましてくれたプロデューサーの言葉が頭に浮かんだ。

「晶葉なら行けるさ。なんてったって、俺のアイドルだ」

 両手で頬を覆いながらしばらく彼との思い出を回想していた晶葉だったが、やはり彼の気持ちには確証が持てず、不安に感じていた。
「だが、助手が誘いに乗ってくれるとは限らんだろう」
「どうしてですか? だって晶葉ちゃん、流れとはいえBまでしたんですよね」
 聞きなれない隠語を耳にした晶葉は、不思議そうにちひろへ質問をする。
「B、とはなんだ」
「ああ、これはですね、古来日本からの言い回しです。つまり、Aはキス。Bはペッティング。触りあいっこです。Cは」
「あ、あわわ! わかった、なんとなくわかったから!」
 おおよそ人に聞かれてはまずそうな単語が話題に出ないよう、得意そうに語っていたちひろを晶葉が止める。
「うふふ」
 少し冷静さを取り戻した晶葉が、ばつが悪そうに言う。
「大体わかった。しかし、しかしだな。確かにそのBとやらはしたのだが、Aがまだでな」
「えっ……」
 今度はちひろが驚きの表情を見せる。
「そんなに驚くんじゃない! だが、やはり順序というものはあったよな……」
「あ、あはは。そうなんですね。ごめんね、晶葉ちゃん。勘違いしちゃって。でも、プロデューサーさんと晶葉ちゃんの仲ですもの。ちょっとくらい順序がずれたって、きっと大丈夫ですよ!」
 表情をコロコロと変えながらも、ちひろは晶葉を必死に励ます。
「そういうものなのだろうか」
「そういうものです!」
「二人で仲良く何してるんだ?」
 そこへ、プロデューサーがやってきた。
「あっ、プロデューサーさん! ちょうどいいところに♪」
「ちょうどよくない!」
 プロデューサーをどうデートへ誘おうか、と考えていたところに彼が現れたので、晶葉は少し焦ってしまう。
「助手よ、じ、実はな」
 が、ちひろがとっさに助け舟を出す。
「プロデューサーさん。今日はもうおしまいですよね」
「ああ」
「実はパーティーの買い出しに行ってきて欲しいんです。晶葉ちゃんと」
「晶葉と?」
 プロデューサーが少し怪訝そうな顔で聞き返す。
「そうです。なんでも電飾に必要な部品が足りないらしくて」
「そうか。晶葉、部品名を言ってくれれば俺が代わりに買ってくるが」
 つれない返事に、晶葉は焦りながらも少しむっとした様子を見せて言う。
「いや! その部品は特殊なものでな! 君だけには任せておけん!」
 勢いに任せて、ついツンとした言葉を発してしまう晶葉。
「は、はは……そっかそっか。信用ないなぁ」
「い、いや、すまん。荷物持ちも必要だからな」
「事務所の方は私でやっておきますから」
「わかった。車の準備をしてくる。晶葉、十分後に下で」
「うむ」
 すんなりとは行かなかったが、なんとかプロデューサーを誘うことはできた。
 ちひろと晶葉は肩をなで下ろす。
「晶葉ちゃん、なんとかなりましたね」
「ああ。助かったぞ、ちひろ」
「うふふ。それじゃあ晶葉ちゃん、作戦のことなんですが……」
 ちひろが晶葉へ、これからの流れを耳打ちする。
 再びプロデューサーとの恋人生活を想像してしまい、晶葉の頬は真っ赤になった。

 

☆☆☆

 プロデューサーは車を駐車場へ停め、晶葉と一緒に秋葉原の街を歩いていた。
「晶葉がアイドルになる前は、こうやって二人で街をよく歩いていたな」
「そうだな」
 二人はこの街、秋葉原で出会い、仲を深め、そして『パートナー』になった。
 電子工作カフェではんだごてを握ったり、裏通りのジャンク屋でジャンクパーツを漁ったり、一緒に大盛りラーメンを食べて舌をやけどしたり、地下のアイドル劇場で一緒にヒートアップしたり。
 ほんの1年前のことばかりだが、さまざまな思い出を共に築いてきた二人にとっては、遠い昔のできごとに思えた。

「晶葉。腹、減らないか」
「うむ。そういえばもう十四時前だしな」
 秋葉原といえばケバブ、というのもバスケコートがなくなってからの流行りだが、おいしいものはおいしい。
 プロデューサーはチリソース入りを、晶葉はヨーグルトソース入りのケバブを注文し、屋台の前で立ち食いをする。
「いただきます♪」
 口ひげを生やした中東風の店員に手渡され、晶葉はおいしそうにケバブを頬張った。
 大人らしい落ち着きと、まるで研究者のような口調からは想像もできないが、彼女は中学二年生。まだ十四歳の少女だ。
 しかしそんな少女とこの街を歩いていると、なんだかとてもワクワクするし、こうして微笑みあいながら食事をする時間も、とても楽しい。
「助手よ、チリソースも一口くれないか」
「ああ」
「……うん! こっちもおいしいな!」
 唇の端に赤いソースをつけ、無垢な笑顔を見せる晶葉。
「晶葉、ここ、ついてるぞ」
「あっ、あわわ」
 プロデューサーは、心に不思議な感覚を抱き始めていた。

 昼食をとった二人は、電子部品の老舗である冬月電子通商へ向かう。
 晶葉に教えてもらったおかげで、プロデューサーも電子工作の基本的な知識は持っているが、まだ回路の設計などの高度なスキルは備えていない。
 プロデューサーにとっては何が何だか分からず、そのうえ指先ほどの大きさの部品がところ狭しと陳列されている店の中を、晶葉はスイスイと通りぬけ、必要な部品を揃える。
「マスター! インライン型の調光器はあるかな?」
「ああ、晶葉ちゃん。もうそんな時期だもんね。あっちの棚にあるよ」
「ありがとう」
 すでに顔を覚えられるほどに通っているのか、晶葉と店主が友人のように会話を交わす。
「晶葉は随分ここに来てるんだな」
「ああ。助手も仕事が落ち着いたらまた一緒にカフェへ通って、ここで一緒に部品を買おう」
 晶葉がニカッと微笑むと、綺麗に生えそろった小さな白い歯が覗いた。
「ふふ、そうしよう」

 

☆☆☆

 二人が事務所へ戻ると、明かりこそついていたが、室内に人気はなかった。
 ちひろが気を利かせ、『二人きり』にさせてくれたのだろう。
「もうみんな帰ったのか。今日は早いな」
「そ、そうだな」
 デートの時はあまり気にしていなかったが、こうして意中の人と二人きりにさせられると、否応なく相手を意識してしまう。
 晶葉はなんだか急に恥ずかしくなって、胸の奥が強く脈打つのを感じた。
「じょ、助手よ」
「ハロウィンのときも、こうして残って作業してたっけ……あ、すまん、なんだ?」
「いや、なんでもない……」
 呼びかけがさえぎられてしまい、口を尖らせながら視線をそらす晶葉。
「晶葉」
「助手は、前のこと……いや、すまん。助手からいいぞ」
「いや……」
 今度はプロデューサーがさえぎられる形となってしまい、二人の間に少し気まずい雰囲気が流れる。
 晶葉とプロデューサーは、それぞれ深呼吸をして一拍置いたあと、同時に声をかけた。
「晶葉!」「助手!」
 またも「あ……」と言いよどんだ二人だったが、今度はプロデューサーが口を開いた。
「晶葉、その、この前のことなんだが」
 晶葉も一度いいかけたその話題を、プロデューサーが再び口にする。
「その、この間のこと、気にしなくていいからな」
 プロデューサーが無理に作った笑顔を晶葉へ投げかけた。
「……」
 が、当の晶葉は不満そうに口を一文字に結び、小さく体を震わせながらつぶやいた。
「きに……する……」
「え?」
 晶葉は大きく息を吸い、拳を握りしめ
「気にすると! 言ったんだ!!」
 と、大きく叫んだ。
 
 夜の静かな事務所に、空調の音だけが響いていた。
 いったいどれだけ間そうしていただろうか。頭に上った血が下り、額にかいた汗が冷える。
 晶葉は堅く握った拳をほどき、柄にもなく落ち着きを失ってしまったことに気付く。
 とんでもないことを言ってしまった。晶葉の目に、じんわりと涙が浮かぶ。
「ぐすっ、ぐすっ……」
 涙があふれ、止まらなくなる。
「うぅっ、えぐっ……!」
 やめなきゃ、止めなきゃ。助手の前で私は何をやっているんだ。そう思うほどに涙がとめどなく流れ、晶葉の袖を濡らす。
 こんな私を見て助手は混乱しているだろう、呆れているかもしれない。晶葉は後ろを向いて、涙を隠そうとした。
「っ……!」
 その時、晶葉の肩を、ふわりとプロデューサーの腕が包んだ。
「ぐすっ、じょ、じょしゅ……?」
 突然の抱擁に驚いた晶葉は、プロデューサーの方向へ向き直る。
「晶葉。大丈夫だ。しばらくこうしていよう」
「うぅっ、うわぁああん……!!」
 晶葉は、彼の腕の中で思い切り泣いた。

「助手にぎゅっとしてもらうと、温かくて、なんだか安心するな」
 二人は晶葉が泣き止んだあともしばらく何も話さずにいたが、彼女がぽつりとそう漏らした。
「そうか。だが俺の平熱は35度なんだ」
「……規則正しい食生活と睡眠習慣を取らんからだ、ばかもの」
 ふふっ、と、二人は微笑む。
 緊張の糸がほぐれたのか、晶葉は少しずつ心の内を語り始めた。
「実はな。あの時助手が、私で、その……興奮してくれたんだと感じた時、とても嬉しかったんだ」
 落ち着きを取り戻した晶葉は、目を閉じてその光景を思い浮かべながら、静かに語る。
「普段は『大丈夫大丈夫』とか言って強がってばかりの助手がな、私に、私だけに見せてくれた特別な気持ち。嬉しかった」
 プロデューサーが静かに頷く。
「だから、だから。気にするな、なんて言わないでくれ。私は……助手のことを気にしてる。つまり」
 晶葉はすぅ、と大きく息を吸ってから顔を上げ、こう言った。
「好きだ」
 その瞬間、二人の唇は優しく触れ合っていた。

 

「ぷはぁっ! ……な、長すぎる」
 呼吸も忘れるほどの深く長いキスに、二人は思わず赤面した。
 頭がぼうっとして、それから何をすればいいのか考えられなくなる。
 忘れていたかのように脈打ちだした鼓動が、胸を強く震わせる。
「んっ」
 晶葉は急に恥ずかしくなって、プロデューサーの胸を腕で押しやる。
 両手で頬を包んでほてりを取りながら、晶葉はプロデューサーを見つめられないまま言った。
「それで、助手は……どうなんだ」
 気持ちを伝え、キスもしたが、肝心の答えをまだ聞いていなかった。
 助手は大人だから、子供な私の心を傷つけないように、優しく抱きとめてくれたのかもしれない。
 キスだって、私に気持ちよく諦めさせるための行動だったのかもしれない。
 背も高くて、顔も良い。それでいて仕事もできる男となれば、大人の女が放っておくはずがない。
 助手は顔が広いから、当然自分につりあうような素敵な女性がいて、それで、付き合ってさえいるかもしれない。
 だから、私は……。
「好きだよ」
「えっ」
 不安な気持ちばかりがつのる晶葉の曇った心を晴らしたのは、プロデューサーのいつもの優しい笑顔と、「好き」という言葉だった。
「さっきはあんなこと言ってごめん。無神経だったよな」
「そんなことない」
「俺、迷ってたんだ。晶葉のことを好きになっていいのか、って」
 晶葉の頭を撫でながら、プロデューサーが優しく語りかける。
「だって担当アイドルに恋するプロデューサーなんて、聞いたことないだろ。でもさ、晶葉に告白されたとき、思ったんだ。あぁ、やっぱり俺、晶葉と一緒にいたいって」
 晶葉が再び涙ぐむ。今度は嬉しい涙だ。
「だからちゃんと返事をするよ。俺は晶葉が好きだ」
 晶葉はプロデューサーの胸へ飛び込み、何度も何度もうなずいた。

 

「恋人になっても、今までどおり何も変わらないな」
二人はソファへ腰かけ、プロデューサーの肩へ晶葉がもたれかかっていた。
「そうだな」
 晶葉が小さく微笑む。
 心地いい沈黙が流れ、二人の間に無限の時間が広がっていく。
「助手よ」
 晶葉はふと思い出したように顔を上げ、プロデューサーへ呼びかける。
「さっきの言葉、もう一度言ってくれ」
「ん、どういうことだ?」
「だ、だから、その……君が私をどう思っているかだ」
 視線を逸らし、恥ずかしそうにもじもじと身をよじる。
「好きだよ」
 プロデューサーがそう言うと、晶葉の頬がかあっと赤くなる。
 かわいい。恋人の初々しい反応に、彼は思わず笑顔になった。
「んっ……」
 プロデューサーが腕を広げると、晶葉が腰を浮かせ、ぽふんと彼の懐へ入った。
 そのまま優しく抱き締める。小さくて、やわらかくて、かわいらしい彼女が、とても愛おしい。
 少し強く抱き締めると、それに反応して、彼女も彼の胸へ顔を擦り付ける。
 二人の鼓動が同調し、包まれるような心地よさが心の底から湧き上がってくる。
「助手よ、私も」
 晶葉は上目使いでプロデューサーを見つめ、
「私も好きだ」
 と、微笑む。
 すると、二人の唇が触れ合った。
 打算などではない、ごく自然に、呼吸をするように二人はキスをした。
 安らかな幸福感に、唇が震える。
 だから、晶葉には欲しいものがあった。
「助手よ。もっと、もっと好きだと言ってくれ」
「好きだよ、晶葉」
 軽くキスをする。
「私も、好きだ……だけど、そうじゃない、なんというか」
 自分でも何が欲しいのか分からない。言葉にできない。でもそれは、確かな証だった。
 晶葉が体をさらに密着させようとすると、彼女の太ももに、何か硬いものが触れた。
 ピクンと、晶葉は一瞬体を緊張させ、悟られてしまったと、プロデューサーが身を退く。
「助手、これは」
 うぶな少女の戸惑いのような、それでいてすべてを抱きとめてくれる母のような表情で、晶葉がプロデューサーを見上げる。
 プロデューサーが晶葉をぎゅっと抱き締める。
「これが君の証拠か?」
 胸に、晶葉の話す振動が伝わる。
「ごめんな。俺も、男なんだ」
「ふふ。なんだ、それは」
 プロデューサーのつたない照れ隠しに、晶葉が笑う。
 晶葉が体をよじり、男性を感じさせるプロデューサーのそれに、優しく触れる。
「私たちはもう恋人なんだ。だから……『恋人らしいこと』をしても、いいのだろう?」
 恋人らしいこと。
 それが、晶葉の欲しいものだった。
「晶葉っ!」
「んんっ……」
 プロデューサーが不意にキスをする。
 唇が触れ、濡れる。互いに擦れあい、熱を帯びていく。
「んんっ、んぅ……♪」
 くちゅり。
 晶葉の口内に、プロデューサーの舌が入ってくる。
 初めてのことに晶葉は一瞬戸惑ったが、彼を強く抱き締め、それを受け入れた。
 ちょんちょん、と軽くつついてくる彼の舌先を舐め、絡める。
 味という味はないが、温かく濡れた彼の舌を舐めているとなんだか頭がふわふわとして、眠りにつく前の浮遊感に似た、そんな心地よさがじんわりと頭の中へ広がっていく。
「晶、葉っ……」
「ん……」
 唇が唾液で濡れ、ぬらぬらと照り光る。
 好意を寄せている人に抱き締められ、唇を触れ合わせ、全身で受け止めてもらう。これ以上の幸せはない。
 胸が、頭が、体の中心がじんじんと熱くなり、彼が、彼女がもっと欲しくなる。
「気持ち、いい」
 心で感じていることが、自然と口から漏れ出てきた。。
 頭では恥ずかしいと思っていても、胸はどんどんドキドキと高鳴って、そのたびに自分の中身を彼へすべてさらけ出したくなる。
 激しく舌を絡ませる。前歯の裏側を舐める。舌を尖らせ、ピストン運動のように相手の口内へ出し入れする。
 卑猥だ。恥ずかしい。だが、気持ちいい。幸せだ。彼はこんな私に幻滅していないだろうか、晶葉は一瞬そう不安に感じたが、その考えはすぐに消えた。
「好きだ、晶葉……」
 彼がすべてを受け入れてくれている。頭の中がじんじんと痺れ、永遠にこうしていたい気持ちになる。
「私も、好きだっ……」
 晶葉がこれまでにない幸せを感じていると、自分の体に異変が起きていることに気付いた。
「(濡れて、いる……?)」
 晶葉の秘所はすでに充血し、そこから漏れ出た愛液が下着を濡らし、ひんやりとした感覚を与えていた。
 さすがに恥ずかしくなり、脚をもじもじとすり合わせながら唇を離し、彼の胸へ額を押し付けた。
「(わ、私っ、キスをしただけで……!)」
 そのまま押し黙っていると、プロデューサーが心配したのか、顔を覗き込んできた。
「晶葉、どうしたんだ?」
 キスで濡れてしまったことが恥ずかしく、とても言えそうにはなかったが、同時に期待感も高まっていた。
 プロデューサーに、『恋人らしいこと』を、してほしい……。
「助手よ、今から言うことに幻滅したりしない、か……?」
 晶葉がおずおずと口を開く。
「もちろんだ」
 するとプロデューサーがいつものように、柔らかく微笑んでくれた。
 晶葉はその笑顔に背中を押され、正直に伝える。
「そ、その……私の股間が、濡れ、て……」
 照れ隠しに、もう一度キスをする。
 すべてを悟ったのか、プロデューサーがふふ、と微笑み、晶葉の頬にキスを返す。
「晶葉。嬉しいよ」
「うぅ~……!」


 プロデューサーはいつだって優しい。レッスンのあとは飲み物を買ってくれるし、マッサージもしてくれる。オーディションに落ちたら、愚痴のような話でもずっと聞き、励ましてくれる。買い物にだって付き合ってくれるし、困ったときはいつだって駆けつけてくれる。
 今までは仕事上の付き合いだったし、その優しさも彼の仕事への熱心さから来たものだと感じていた。いや、そう思わなければ、この胸の高鳴りを抑えられなかった。
 だが、今はその必要はない。一人の女性として、恋人として、彼が自分を抱き締めてくれる。自分が彼を好きで、彼が自分を好きで。
 幸せ。何度そう感じても、本当に幸せだった。
「晶葉。触っても、いいか……?」
 プロデューサーが耳元でそうささやく。
 相手に聞こえてはいないかと心配してしまうほど、胸がドキンドキンと脈打っている。
 プロデューサーに、自分の恥ずかしいところを触られる。想像しただけで、どうなってしまうか分からない。
 それでも、晶葉は彼に、触ってほしかった。
「お願い……触って……」
 晶葉がプロデューサーをぎゅっと抱き締める。それだけで、勇気が湧いてくる。
「分かった。痛かったら、すぐ言うんだぞ」
 プロデューサーは晶葉を抱き締めていた左手を解き、晶葉の太ももへ優しく滑らせる。
「んんっ……♪」
 晶葉の体が小さく震えた。体が敏感になっている。
 彼が指先を太ももの付け根から膝のあたりまでゆっくりとなぞるたびに、小さな電流が晶葉の体を流れる。
 プロデューサーの額にキスをする。ふふ、と微笑み、彼も晶葉の額へキスをした。
 手のひらが優しく晶葉の小さなお尻を包む。円を描くように触れられ、背中がぴんと張るように反応する。
 尻たぶを柔らかく揉まれ、下半身に血流が集中していく。
「あっ、んんっ……」
 少女の口から、艶のある嬌声が漏れ出る。
 晶葉はハッとしたが、まだ彼には気付かれていないようだった。
 プロデューサーの指先がスカートの中へと入っていく。
 覚悟はしていたが、やはり恥ずかしい。
 下着越しに、彼の手のひらの熱が伝わってくる。性器を柔らかく包まれ、上下に優しく擦られる。
「んっ、くふ……」
 初めての感覚に、晶葉はぎゅっと目を閉じる。
 下半身から全身へと、じんわり熱が広がっていく。まるで心臓がそこへ移動してしまったかのように錯覚を覚え、言いようのない恥ずかしさが込み上げる。
 花弁はさらに充血し、熱く香る秘蜜を分泌していく。
 自分の愛液で彼の指を汚してしまってはいないか、晶葉は心配だった。
「助手よ、そんなにしたら……」
「大丈夫だ。事務所のものでよければ、替えの下着はある」
「ば、ばかっ、そういう意味では……!」
 プロデューサーが微笑む。
 晶葉は彼がわざと抜けた受け答えをしているのではと感じたが、彼のそういうところもまた、好きになったところのひとつだ。
 下着がさらに濡れ、彼の指を湿らせる。
 目の細かいなめらかな女性用下着の上を、するすると中指が滑る。
 恥丘から秘芯を撫で、とくとくと蜜を滲ませる穴へ軽く下着を押し付ける。
「んんっ……♪」
「晶葉のここ、熱くなってる」
 耳元でいやらしい言葉をささやかれる。
 胸がドキドキする。言い返したくても、言い返せない。
「触っちゃ、いや……」
 触ってほしい。もっと、あなたに触ってほしい。
 体温が上昇し、体の芯が熱くなる。
 それに応じて、晶葉の秘芯がぷっくりと膨らみ、下着を小さく押し上げた。
「晶葉、ここ」
 プロデューサーがそこへ優しく触れ、円を描くように指を動かす。
「あッ……♪」
 晶葉は敏感に反応し、白首をのけ反らせた。
 下着越しでもプロデューサーの指紋の凹凸が分かるほどに、その小さな突起は敏感な器官だった。
「くっ、ああぅ……」
 晶葉はプロデューサーの右腕にしがみつくようにして、迫りくる快感に耐えていた。
 無理もない。彼女は中学生であり、自慰の経験もないことはないが、こうして男性に触られることは初めての経験だった。
 しかも相手は意中の人。幸福感と充実感で快感が何倍にも増幅され、脳を芯からしびれさせる。
 もう、下着は使い物にならなくなるほどびっしょりと濡れてしまっていた。
「晶葉、直接触ってもいいか」
「う、うん」
 下着の上からでもこんなに気持ちがいいのだから、直接触られたら、どうなってしまうか分からない。恥ずかしい。もうやめにしたい。
 しかし、晶葉の心はプロデューサーを求めていた。もっと欲しい、あなたが私の恋人であることを、この身体に刻み付けてほしい。
 プロデューサーがクロッチ部を横にずらし、秘穴の入り口に指を置く。
「くふッ」
 唇の間から、悩ましい声が漏れ出る。
 彼の中指がゆっくりと秘穴の周辺をほぐすと、しとしとと温かい秘蜜が湧き出し、その指を濡らした。
「晶葉、かわいいよ」
「うぅ……♪」
 入り口でいじらしく中指を動かされながら、愛の言葉をささやかれる。
「中に入れてもいいか」
「ゆ、ゆっくり……」
 キスをする。
 晶葉が舌を差し出すと同時に、プロデューサーの指がゆっくりと晶葉の中へ入ってきた。
「んッ、ふうッ」
 くちっ……。
 小さな水音を立てて、秘穴が彼の指を受け入れる。
 ピンク色の粘膜から分泌された潤滑液が、彼の小指をコーティングし、ぬるぬると包んでいく。
「晶葉、痛くないか」
「大丈、夫っ……」
 プロデューサーが細い小指を使ってくれたおかげで、痛みはない。
 しかし、自分の身体に異物が入ってくるという恐怖は、想像していたよりもずっと大きなものだった。
「助手……」
 晶葉は急に心細くなり、彼を呼びかける。
「分かった、少しここで止めよう」
 それに応じて、彼が指の動きを止めた。
 その気遣いがとても心強く、晶葉の目からは涙が滲んでしまった。
「ご、ごめん。晶葉、痛かったか?」
「ううん、ちがう……」
「じゃあ」
「好きだ」
 プロデューサーの頬を両手で包み、晶葉がキスをする。
「俺も晶葉が好きだ」
 ふふ、と二人は微笑んで、見つめ合う。
「ありがとう。もう、大丈夫だ」
 もう一度キスをしてから、晶葉が言った。
 先ほどよりもゆっくりとした速度で、プロデューサーの指が晶葉の奥を目指して動く。
「んっ」
 恐怖感は薄れ、彼への期待が高まっていく。
「晶葉、根元まで入ったぞ」
「あっ……ふふ、入ってしまったな」
 プロデューサーの肩へ寄りかかり、晶葉は幸せを噛み締める。
 それが指とはいえ、彼の身体と繋がることができた。
 切迫感はまだあるが、鼓動がゆっくりとしたリズムへと変わり、充足感が胸を満たしていく。
 プロデューサーはそのまま指を動かさず、晶葉へキスをしてくれた。
 晶葉も舌を絡め、キスをする。
 次第に互いの息が荒くなり、プロデューサーの頬も紅潮する。晶葉の耳が、プロデューサーの吐息で温められる。
 晶葉の体を触っているうちに、プロデューサーもまた、胸の鼓動を速めていた。
「助手、助手も興奮しているのか?」
「あ、あぁ……」
 ふと顔を離して見てみると、プロデューサーのズボンの一部が、大きく膨らんでいた。
 プロデューサーが、私の体に興奮してくれている。
 晶葉は嬉しくなり、少しいたずらっぽい視線で彼を見つめた。
「助手のここ、大きくなっているな」
「晶葉がかわいいからな」
 不意に好意を投げかけられ、晶葉はまた赤面する。
 照れ隠しに、プロデューサーの大きく盛り上がった股間をさすってやる。
「あっ、晶葉っ」
「ふふ、お礼と罰だ」
 あの時も大きいと感じたが、やはりプロデューサーのそれは大きい。
 身体がまだ成熟しきっていない中学生の少女から見れば、なおさらだ。
「ここ……触ってもいいか?」
「ああ」
 晶葉がプロデューサーのズボンのジッパーを、ゆっくりと下ろす。
 下から押し上げているものが大きいので、少し開けにくい。
「開けにくいな」
「ははは」
 そのままベルトを外し、プロデューサーの下半身を下着姿にしてやる。
「さ、触るぞ」
 晶葉はおずおずと手を伸ばし、彼の大きな膨らみへ触れた。
 そこはとても温かく、たくましい場所だった。
 そのままゆっくりと、上下にこする。
「んんっ……」
 プロデューサーが小さく喘ぐ。
「気持ちいいのか……?」
 晶葉は嬉しくなり、そのまま大きな動きで揉みほぐした。
 晶葉がいろいろなさすり方をすると、それにプロデューサーが反応する。
「晶、葉」
「ん?」
「気持ちいい……」
「ふふふ、そうか♪」
 晶葉は特別SやMというわけではないが、やはりこちらの動きで相手が反応してくれると嬉しいし、楽しい。
 そのままキスをし、体を密着させながらさする。
「ふっ、くふっ」
「ちゅっ、ちゅぷっ……♪」
 プロデューサーのパンツをめくり、彼自身を露出させる。
「あ、晶葉」
「直接触るぞ」
 深くキスをしながら、晶葉がプロデューサーのそれへ触れる。
「んっ」
 なめらかな細指が絡みつき、ゆっくりとしごきだす。
 プロデューサーが晶葉の耳元で喘ぐ。感じているようだ。
 晶葉が少し強気に責めていると、負けじとプロデューサーも晶葉の股間へ手を伸ばしてきた。
「んんっ……♪」
 とろけた視線で舌を絡め、上気し、互いの股間をまさぐりあう。
 感じ合い、交じり合う。
 互いの名前を呼び合いながら、ひたすらに求め合う。
 二人の間に、愛が芽生え始めていた。
「そうだ、晶葉」
「ん?」
 視界いっぱいに相手の目が映る距離で、プロデューサーが口を開いた。
「晶葉のを、舐めたい」
「ッ……!?」
 ほわほわと浮かんでいた意識では一瞬理解ができなかったが、プロデューサーは確かに、こう言った。
「晶葉のあそこを、舐めたいんだ」
 プロデューサーが、私の股間を、舐める……!?
「ど、どうしてだ!?」
 晶葉は驚き、思わず理由を聞いてしまう。
「どうしてって、晶葉をもっと気持ちよくしてあげたいから」
 ふふ、と微笑みながらプロデューサーが返す。
 彼にとっては何てことない愛情表現なのかもしれないが、晶葉にとっては初体験中の初体験だ。
「だッ……だめだだめだ! そんな、大体、私はっ、まだお風呂にも」
「晶葉の身体に汚いところなんてないさ」
「ッ……!」
 プロデューサーはこういうキザなことを、平気で言うタイプだ。
 晶葉はそう心の中で責めた。
「どうしても、だめ、か?」
 恥ずかしすぎる。いくら相手が大好きなプロデューサーとはいえ、まだ付き合って間もない関係だ。
 そんな彼に、私の恥ずかしいところをあらわにするなんて。
 幻滅されたらどうしよう。嫌われたらどうしよう。そんな考えが、晶葉の頭をぐるぐると取り巻く。
 すると、プロデューサーが晶葉を抱き締めてきた。
「ごめん。恥ずかしかったよな。無理を言ってごめん」
 プロデューサーがそう謝る。
 晶葉は何だか申し訳なくなって、どうにかしようと考えを巡らせた。
 そして、こんなことを思いついた。
「じょ、条件がある」
「ん?」
「まず、明かりを消して、そ、それから……助手のも舐めさせろ」
「晶葉……!」
 まるで大好物を目の前に差し出された少年のように、顔を明るくし、プロデューサーがキスをした。
「晶葉!」
「そんなに嬉しいのか?」
「ああ。晶葉をもっと感じたい」
「……ばか」
 明かりを消し、鍵をかける。
「この部屋、明かりを消しても外から光が結構入るんだな」
「そうだな……」
 晶葉は少し戸惑っていたが、明かりをつけている時よりも恥ずかしさは和らいだ。
 互いに服を脱ぎ、ソファへ腰かける。
「晶葉」
「ん……」
 そっと抱き締め、キスをする。
 下着しか身に着けていない状態では、体温が直に伝わり、触れられた感触も敏感になる。
 ドキドキとした鼓動が、相手に聞こえてしまいそうだ。
「晶葉、綺麗だよ」
 中庭から差し込む光が、上下の下着だけになった少女の体を、青白く照らし出す。
 中学二年生にしては、晶葉の胸は大きい。足もすらっと伸びていて、さすがアイドルといったプロポーションだ。
「あまりじろじろ見るなっ……恥ずかしいじゃないか」
 晶葉が両手で胸を隠し、むぅ、といった表情を見せる。
「ごめんごめん。でも、本当に綺麗だよ、晶葉」
 キス。
 女性らしく丸みを帯びてきた細腰を抱き寄せ、そのかわいらしい唇に触れる。
 ぷるぷるとしたピンク色の唇は、何度触れても飽きることはない。
 むしろ、そのたびに新たな発見と驚きがあるほどだ。
「んんっ……♪」
 触れ合った晶葉の胸が、しっとりと汗ばんでいる。
 わずかに立ち上る少女の香りが鼻腔を撫で、プロデューサーの大人らしいそれをさらに隆起させる。
「晶葉、胸、触ってもいいか……?」
 ブラジャーのホックに指をかけ、プロデューサーが尋ねる。
「ああ、というか、もう外す準備は万端のようだが」
 晶葉がふふ、と微笑む。
 抱き締めるように回した両手で、ゆっくりとホックを解き、片腕ずつブラジャーのストラップを外す。
 すると、プロデューサーの目の前に二つの大きな若い果実が現れた。
「晶葉……」
「む、胸に向かって名前を呼ぶなっ。あっ……」
 すくい上げるようにして両手で胸を包むと、晶葉が敏感に反応する。
 そのまま優しく揺らすように揉みながら、キスをする。
「ん、ちゅっ……♪」
 晶葉の胸は柔らかく、また形もいい。
 ピンク色の若々しい乳首は、彼女がまだ誰のものでもない証だ。
 そしてそんな彼女が、自分の恋人になったのだと思うと、プロデューサーの胸は幸せな気持ちでいっぱいになった。
「ちゅ、ぷぁっ……♪ もう、助手ばかり触って、ずるいぞ」
 晶葉は唇を尖らせ、胸に夢中になっているプロデューサーをとがめる。
「す、すまん」
「私にも触らせろ」
 そう言うと晶葉はプロデューサーの股間へ手を伸ばし、下から撫で上げるようにして手を触れた。
「んんっ」
「ふふん、これでお互い様だな」
 プロデューサーのそれは、すでに限界といわんばかりに勃起している。
 尖りきった先端では、我慢汁があふれているのか、下着の布へ黒いシミが広がっていた。
 晶葉はその先端へ人差し指を乗せ、くるくると刺激する。
「晶、葉っ……」
 プロデューサーが喘ぎ、負けじと舌を絡めたり、円を描くように乳首の周囲を撫でまわす。
 晶葉の乳首は勃起し、彼の指を押し返した。
「硬くなってきたな」
「た、たくさん触るからだっ……♪」
 唇、舌、胸、乳首。敏感な部位を刺激され、晶葉の秘所はすでにとろけきっていた。
 いくら奥ゆかしい少女とはいえ、我慢できる時間にも限界はある。
 晶葉は太ももを擦り合わせ、そわそわと視線を泳がせる。
 それを感じ取ったのか、プロデューサーがこう切り出した。
「晶葉。晶葉が舐めたい」
 そう、こうして下着姿になったのも、晶葉とプロデューサーが互いの性器を舐め合うという約束をしたからだ。
 シックスナイン。互いの股間へ舌を這わせて舐め合うその様子が、算用数字の『69』の形に似ていることからそう呼ばれている。
 ただでさえ卑猥なオーラルセックスの情景を想像し、晶葉の頬はどんどん赤く染まっていく。
「わ、わかった……」
 晶葉がうなずく。
「じゃあ、お尻をこっちに向けて、俺の上にまたがってくれ」
 プロデューサーがソファへ寝そべろうとするが、晶葉がそこでひとつ条件を出した。
「ちょっと待ってくれ」
「どうした」
「恥ずかしいから、その、するときは目を閉じていてくれないか……?」
 晶葉は中学二年生だ。その年齢ともなれば、当然第二次性徴期に入っており、胸や腰が丸みを帯びるだけでなく、陰毛も生えだす。
 彼女は、そこが気がかりだった。
「わかった。じゃあ、こっちへ向けて」
「本当にいいのか……?」
「もちろんだ。晶葉、好きだよ」
 プロデューサーがキスをし、晶葉を安心させる。
 寝そべったプロデューサーの顔へ向けて、晶葉が小ぶりで形のいい尻を向け、顔を彼の股間へ近づける。
「こ、これでいいか?」
「ああ。晶葉、お尻までかわいい」
「もう、いちいちそういうことを言うなっ……♪」
 プロデューサーが晶葉の下着へ手をかける。
「本当に見ちゃだめだからな!?」
「もちろんだ。だけど」
 プロデューサーが目を閉じ、ゆっくりと彼女の下着をずらす。
 十分すぎるほどに濡れた性器は、下着との間に糸を引き、わずかに水音を鳴らす。
 窓から差し込む青白い光が、濡れた陰毛を幻想的に浮き上がらせている。
「その代わり、舌でしっかり味わう」
「ひッ……!♪」
 プロデューサーの舌が、晶葉の濡れた秘所に触れる。
 ぴちゃ、と音を立てて、甘酸っぱい風味が彼の舌へ広がる。
「ばっ、ばかっ! いきなり舐める奴が……ああッ」
 尖らせた舌が、大陰唇と小陰唇の間をなぞる。
 その溝には分泌された愛液が満ちており、差し入れるたびに舌へ愛液がまとわりつく。
 充血したクリトリスがふるふると震え、今にもその薄皮を脱いでしまいそうだ。
「んッ、ああんッ……♪」
 下半身から伝わる耐えがたい刺激に、少女の口から艶めかしい嬌声が漏れる。
 晶葉はびくびくと身体を震わせ、初めての快感に思わず奥歯を噛み締めた。
「助手のもしてやるっ」
 晶葉はプロデューサーの下着をゆっくりと脱がし、その大きな肉棒をあらわにさせた。
「(やはり大きいな……口に入りきるだろうか)」
 彼の大きさに少し不安がりながら、晶葉は舌を出し、おずおずと先端を舐め始めた。
「んっ……」
 舌をちろちろと動かすたびに、肉棒は反応し、プロデューサーが声を漏らす。
「(先っぽ、しょっぱい……)」
 彼の先端はすでに濡れ、きらきらと光を返していた。
 指でぬるぬると刺激してやると、プロデューサーの喘ぎ声が一層高まる。
 そのまま分泌液を亀頭へ広げ、手のひらでこねるようにしごく。
「くっ、ああっ」
「ふふ、気持ちいいか……? んんっ♪」
 得意顔になっていたところで、硬く充血した秘芯を責められる。
「んっ、こら、そこはっ、あッ……」
 舌先でクリトリスの周りをなぞられ、晶葉はビクビクと反応してしまう。
 愛液と唾液にまみれた舌は、指と違った快感をもたらしてくれる。
「助手はどうしてそんなにっ……あんッ」
 プロデューサーの鼻が膣口に当たり、舌の先端がクリトリスを同時に刺激する。
 かわいい尻たぶがふるふると震え、恥ずかしいというのに、腰が勝手に動いてしまう。
 彼女がこんなにいやらしくては幻滅されてしまうだろうか、そう思いながらも、快感の波は止まらない。
「晶葉、おいしいよ」
「ッ……!♪」
 照れ隠しに、プロデューサーのペニスを扱く。
 すでに我慢汁があふれて全体を覆っているため、右手をスムーズに、リズミカルに上下させることができる。
 人差し指と親指は強く、その他の指は緩く握るなどして緩急をつけて責めていく。
「んんッ」
「ふふふ、女の子みたいな声を出してしまって♪」
 晶葉はさらに口も使い始めた。
 竿の側面に何度もキスをしたあと、舌の表面を使って亀頭を舐め上げる。
 そのたびに我慢汁があふれてくるので、何度すくい上げてもきりがない。
「(咥えてみるか)」
 晶葉はその小さくかわいらしい口を開け、彼の亀頭をぱくっと咥えた。
「ああッ」
 温かい口内に包まれ、プロデューサーが喘ぎ声を上げる。
 ぷにぷにすべすべとした晶葉の頬の内側は、ぬるぬるのくちゅくちゅで、咥えられてしまえばひとたまりもなかった。
「ひもひひひふぁ?」」
 晶葉が彼のものを咥えたまま話す。
「ああ……すごく気持ちいい」
「ふふ♪」
 舌を尖らせ、その先端で鈴口を舐める。
 感じやすい場所なのか、プロデューサーの腰が思わず動いてしまう。
「あ、晶葉っ……」
 今にも暴発しそうな射精感がじわじわと高まっていくが、今は晶葉の口の中へ入れてしまっている。
 いきなり出してしまっては、晶葉が咳き込んでしまうだろう。だが、言葉を発する余裕もあまりなかった。
「んっ……」
 意識をそらそうとしたプロデューサーが晶葉の胸を触る。
 中学二年生にしては大きい胸が、四つん這いになることによってさらに大きく見える。
 だが、ふにふにとした柔らかい感触が、逆に興奮を高めてしまった。
 晶葉の口内で、プロデューサーの肉棒が跳ねる。
「んんっ……!♪」
 晶葉の胸の先端が、ピンと硬く勃起している。
 プロデューサーが乳輪のまわりをなぞると、「んっ、くふん」といった喘ぎ声を晶葉が上げた。
「こうされるの、好きなのか?」
「べ、別にそういうわけでは……んっ♪」
 乳首を軽くしごきながら、クリトリスに舌を這わせる。
 秘穴からはとめどなく蜜があふれ、プロデューサーの顔を濡らしていく。
「こっ、こらぁ……そんな、同時にしたら……!♪」
 晶葉は感じやすい場所を二つも同時に責められ、身体を何度も跳ねさせる。
 下半身からも上半身からも、快感の波が押し寄せる。それだけでなく、口内にはプロデューサーの硬い肉棒が押し込まれている。
「(助手の、おちん×ん……こんなに硬くなって……)」
 女性としての喜びが、全身を駆け抜ける。
 その瞬間、プロデューサーの前歯が軽くクリトリスに当たった。
「ッ……!?♪」
 まるで背骨に電流を流されたかのようにビリビリとした強い刺激が、晶葉の身体をしならせる。
「はッ、ぁッ……♪」
 晶葉はあまりの快感に体勢を崩し、ソファへ肘をついてしまう。
「晶葉、どうした」
「い、いや……なんでもない」
「もしかして、イッたのか」
「なっ、なっ……!」
 晶葉は思わず振り返ろうとするが、腰を掴まれているせいで振り返れない。
「ふふ、ごめんごめん。じゃあ、もっと頑張るからな」
 そう微笑むと、プロデューサーが舌使いを開始する。
 小陰唇を吸うようにして甘く噛みながら、舌先でそれを舐める。
「ひッ……♪」
 軽い絶頂を迎えた晶葉の身体は敏感だった。
 クリトリスだけでなく、小陰唇でさえもさくら色に充血し、刺激を何倍にも増幅させる。
 身体中が性感帯のようになり、プロデューサーが掴んでいる腰でさえも、快感をもたらしている。
「じょ、助手よ、少し休憩しないか」
 晶葉は先ほどよりも大きな『快感』に襲われることを恐れ、プロデューサーへ休憩を促す。
「晶葉、俺、わがまま言ってもいいか」
 だが、プロデューサーの返答は意外なものだった。
「ど、どういうことだ」
「晶葉の口の中に出したい」
 プロデューサーの熱い精液が、私の口の中に何度も何度も打ち込まれる。
 そう考えただけで、晶葉の胸は熱くなり、股間からは分泌液が滲みだした。
 しかし、それは恥ずかしすぎる。彼の思いを全身で受け止めたい気持ちはあるが、もしその最中にまたイッてしまったら……。
「我慢、できないのか……?」
 晶葉がおずおずと尋ねる。
「あッ♪」
 プロデューサーが舌で答える。
「わ、わかった……でも、出そうになったら言うんだぞ?」
 晶葉はしぶしぶといった様子でうなずき、彼のものを咥えなおす。
「んんッ……」
 唇をすぼめて、鬼頭の裏側を舌で舐める。
 あふれ出す先走り汁を竿に塗り広げ、手でしごく。
 尖らせた舌の先端で円を描くように秘芯を刺激しながら、蜜のしたたる秘穴に指を挿し入れる。
 愛する者の性器を愛で、その愛を確かめ合う。
 心地の良い幸せに包まれながら、二人は互いを高め合っていく。
「晶葉っ……」
 晶葉が手でしごく勢いを強めるたびに、プロデューサーの腰も跳ねる。
 プロデューサーが舌をうねらせるたびに、晶葉の声が上ずる。
 二人は、すでに限界を迎えつつあった。
「晶葉ッ、もうッ……!」
「んッ、んッ……!♪」
 射精の予兆を感じ取った晶葉が、口を強く絞り、手のしごきを速める。
 それに合わせて、プロデューサーも指を最奥まで挿し入れ、小刻みに振動させながら、クリトリスを弾くように舐め上げた。
 晶葉の腰が跳ね、ぶるぶると震えだす。
「で、るッ……!」
「んッ、んんッ……!!」
 どくん。
 プロデューサーの熱く激しい噴出が、晶葉の口内へ放たれる。
 それと同時に、晶葉の身体も激しく硬直し、プロデューサーの口へその穴を押し付けた。
「はッ、ああッ……!」
「んッ、んぷぅッ……♪」
 どくん、どくんと、口内へさらに熱い汁を注ぎ込まれる。
 そのたびに晶葉は腰を大きく跳ねさせ、激しい快感に身を打つ。
「んっ、んんぅ……」
 ようやく射精が落ち着いた頃には、晶葉の口内は彼の精液でいっぱいになってしまっていた。
 プロデューサーがペニスを引き抜き、あわてて彼女にティッシュを手渡す。
「……ぷあっ、はぁっ、はぁっ」
「晶葉」
 ピンク色の唇の端に、白濁が付着している。
 その光景があまりにも愛おしく、プロデューサーが晶葉を抱き締める。
「ちょっ、助手」
「晶葉、好きだ」
「もう、君の行動はいつでも突然だな。……私も、大好きだぞ♪」
 絶頂のあとの火照った身体が、今は心地いい。
 しっとりとかいた汗さえも、二人には気にならない。
「晶葉、キスしても、いいか」
「私は今まで、君のものを咥えていたのだぞ」
「かまわないさ」
「んっ……♪」
 二人は愛のままに、唇を重ね合った。

スパスパ☆リラックス♪

霧矢あおいさんお誕生日おめでとうございます。

1月31日に間に合わなくてごめんなさい。

あおいちゃんと蘭ちゃんが温泉に入って野球をする謎SSです。

 

(約7200文字)

宇和島拓哉

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 アイカツ!、始まります! フフッヒ♪


 ピピピピ、ピピピピ。
 ぼんやりとした意識を、目覚まし時計が覚ましてくれる。
 カーテンの隙間から日の光が差し込む、朝の六時三十分。スターライト学園の朝はいつもさわやかだ。
 私は体を起こして、大きく伸びをした。
「おはよう」
 って、少し前なら言ってたんだけど。
 いちごがアメリカへ旅立ってから半年。私は一人、この部屋で寝起きしている。
 寂しくないと言えば嘘になるけど、でも、一回りも二回りも大きくなって帰ってくるいちごの隣に立てるよう、私もがんばらなくっちゃ。
 ……物理的な意味で「大きくなって」たらどうしよう。いちご、食べるの大好きだし。

 食堂でクラブハウスサンドとミニサラダ、そして青汁牛乳を飲む。
 最近『食育』ってよく言われてるけど、朝の食事はとても大切。夕食から十二時間くらい経ってるから、体はもちろん、頭もエネルギー不足になってる。そこにしっかり喝を入れて、体の芯から目覚めさせるの。
 ちなみにこの朝食は、脂質、糖質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルの五大栄養素がバランスよく含まれた完璧なメニューなの!
 健康はアイカツの基本だもんね。
「おはよ」
「おはよう!」
 蘭が向かいの席にやってきた。二人とも忙しくはあるけど、朝に余裕のある時はこうして一緒にご飯を食べている。
 蘭はもちろん和食のメニュー。小盛りのご飯に、アジの開き。大根とわかめの味噌汁(これは日替わりなの)に、白菜の漬物。あと、トマトまるごと一個!
 ちなみに、蘭が食べる魚の骨を取るのは私の仕事。蘭、骨を取るのが苦手なの。
「昨日はよく眠れた?」
「いいや、あんまり」
 蘭がトマトを一口食べたままぼんやりしていたから、少し気になってしまった。
「悪い夢でも見たの?」
「あぁ。おとめがえびぽんのエビを、サクサクのフライにして食べてしまってな」
「あらら」
「天ぷらじゃなくてフライだぞ、フライ……」
「そっち!?」
 えびぽんのエビは天ぷらなところがかわいい、という意外な豆知識を蓄えていると、アイカツフォンの通知音が鳴った。
 毎朝配信されるオーディション情報が更新されたみたい。
「蘭、今日の予定は?」
「特にない。オーディションのチェックでもしようかと思ってたところだ」
「そうなんだ。実は私も」
 二人で最新の情報をチェックする。アイカツはカードが命だけど、情報も命。鮮度のいい情報を手に入れられれば、それだけいい対策も打てる。オーディションにも歌やダンスのレッスンはもちろん、さまざまな知識をため込んでおく必要があるから、こういうのは早いほうがいい。
「モデル系だと……今日はめぼしいものがないな」
「あっ、こんなのはどう?」
「どれどれ。温泉旅館のイメージアイドル、か」
 栃木県の奥鬼怒温泉郷の協会が、九つある温泉旅館それぞれにイメージアイドルを募集しているらしい。
 和風なものが好きな蘭には、ぴったりのお仕事かも。
「温泉に浸かれるかもね」
「ふふ、そうだな。受けてみるか」


「アイ! カツ! アイ! カツ!」
 二人でそれぞれオーディションの申し込みをしたあと、早速トレーニングに入った。
 私は二週間くらい先だけど、蘭はあと五日。ちょっと急ぎ足で仕上げなくちゃ。
「温泉旅館のオーディションって、どういうことするんだろうね」
「仕事の内容は宣伝動画を撮ったり、デパートの物産展で売り子をしたり、トークショーをしたりと書いてあるけど……あっ、オーディション要項も書いてあった」
「どんな感じ?」
「……野球をするらしい」
「野球!?」
「合格枠がちょうど九人だから、勝ったチームをそのまま合格にするって」
「あはは、斬新。それじゃあ練習しよっか」

「みんなー! 締まっていこー! なのです♡」
「おとめさま、キャッチャーマスクがお似合いですわ♪」
「私野球やったことないんだけど、大丈夫かなぁ」
 野球をするには人数が必要。ということで校内放送でメンバーを募ってみたら、みんなが集まってくれた。
「……なんでいきなり試合なんだ?」
「ふふふ。実践的な方が役立つし、楽しくできるでしょ?」
「それはそうだが」
 おとめちゃんはキャッチャー、さくらちゃんはセカンド。しおんちゃんがファーストで、右方向への内野ゴロは完璧。
「どーして吸血鬼がレフトなのよ~~!」
 ユリカ様はレフト。
 センターはSpLasH!の立花ミシェルちゃんで、ライトは同じくSpLasH!の氷室朝美ちゃん。
「Alright♪ 本場アメリカの守備力を見せちゃうよ!」
 かえでちゃんはアメリカでも野球をやっていたということで、重要な守備位置であるサード。
 ショートは謎の黒魔術パワーを信じて、クラスメイトの黒澤ミチルちゃん。
 そしてピッチャーは蘭。百六十センチ近い長身から放たれるストレートは、それだけで武器になるはず。
 ちなみに監督は私、霧矢あおい。さまざまなアイドルの癖を研究した『IDアイカツ』で、このゲーム、絶対に勝ってみせる!
「プレイボールだぜ! Yeah!!」
 まずは蘭の緊張をほぐすために、投げやすいコースへ導くようにおとめちゃんに言っておいた。最初は外角低めへ外すよう……
「ユリカたーん! バック! バックなのですー!」
 って、ど真ん中へ投げさせたうえに、見事に打たれたー!
「『ただ立ってればいいから』って聞いたのに、どうして私のところへボールが来るのかしら~!?」
 でもそこは、運動神経のいいユリカちゃんが難なくキャッチ。
 これでワンナウト。ふぅ、穏やかじゃない展開だった。
 そのあとはニ者凡退で攻守交代。おとめちゃんには次の守備までき~っちりと『キャッチャーの極意 ダイジェスト版』を読んでもらうとして、さぁ、攻撃だ!
《一番、セカンド、北大路さくら》
「がんばりますわ!」
 さくらちゃんがヘルメットを直しながら、バッターボックスに入る。
「さくらたーん! ふぁいとなのですー!」
「さくらー! 気負わずにね!」
 さくらちゃんにはボールをよく見るように言っておいた。目を慣らさせなくちゃ。
 ピッチャーが第一球を投げる。
「ストライク!」
 よし、よく見た。次は甘い球が来たら、思い切って振ってほしい。
「ストライク! ツー!」
 ……あれ? 今ど真ん中だったよね?
「ストライク! バッターアウトだぜ!」
 さくらちゃんがいつものニコニコとした笑顔でベンチに戻ってくる。
「さくらちゃん、どうして振らなかったの!?」
「ボールをよく見よ、とのご指示でしたので……」
「そういう意味じゃない~! けど、私の指示があいまいだったかも。ごめんね」
 そうだった……さくらちゃんは素直すぎるから、細部まできちんと伝えるべきだったんだ。これは私の失敗。
≪二番、センター、立花ミシェル≫
「いっくよ~!」
 次はSpLasH!のミシェルちゃん。彼女は運動神経がいいし、ブンブン振ってくれるはず!
「ストライク! バッターアウト!」
 ブンブン三振してくれた。まずい、これでツーアウト。
≪三番、サード、一ノ瀬かえで≫
「OK! 私の出番だね!」
 さてと、かえでちゃんがバッターボックスに入って……初球打ち! 左中間!
 レフトとセンターがあわててボールを取りに行ったけど、かえでちゃんはもう二塁に。すごい!
「Yeah!」
 かえでちゃんがかわいくガッツポーズ。野球経験があるとはいえ、さすがスーパーアイドルだわ。
≪四番、キャッチャー、有栖川おとめ≫
「おとめさまー! がんばってくださいませー!」
「はいです~!」
 おとめちゃんがバットを構える。
 彼女は小柄だし体力もないけど、緊張には強い。それはステージを見れば分かるし、今まで一緒に過ごしてきてそれがたくさん伝わってきた。だから、今日もきっとやってくれるはず。
「ボールツー!」
 カウントノーツー。ツーアウトだけどストライクはないし、得点圏にかえでちゃんがいる。ここは思い切って振ってもらおう。
「タイム! おとめちゃん、次はきっといい球が来るはず。それを狙って振っていって」
「わかりました!」
 ぴょんぴょん飛び跳ねながら、おとめちゃんがバッターボックスへ入っていく。調子がいいみたい、これは期待できる。
「いくですよ~!」
 と、おとめちゃんが大きくバットを振ってみせた瞬間、
「わあっ!」
 ヘルメットがぐるりと回って、おとめちゃんの視界を覆ってしまった! ああ! おとめちゃんは小顔だからヘルメットの大きさが合ってなかったんだ!
 そこをチャンスとばかりに、ピッチャーがボールを投げる。まずい!
「もーう、えいなのです~!」
 カキーン!
「センター下がってーー!」
 だけど、焦ったおとめちゃんがやみくもに振ったバットが、なんとボールに当たった! しかもそれはグングン伸びて……
「ホームランだぜ! Yeah!」
「わあ、なのです……!」
「おとめちゃんすごい!」
 一気にフェンスの向こう側へ!
 かえでちゃんとおとめちゃんがホームイン。初回に二点先制!
「Foo! おとめのおかげで還ってこられたよ!」
「どういたしましてなのです~♪」
≪五番、ファースト、神谷しおん≫
 続くしおんちゃんはツースリーまで粘ったけど、あえなく凡退。
 でも、カットに続くカットで、ボールを多く投げさせたのはいい仕事だった。

 そのあとは投手戦。後半まで動きもなく、この勢いのまま勝てると思っていたけど……事件は八回に起きた。
 バシッ!
「うッ……!」
「蘭!」
 疲れのせいか甘いコースに入って打たれたボールが、蘭の右ひじを直撃した!
 私は思わずタイムをかける。
「蘭、大丈夫!?」
「あぁ、ちょっと当たっただけだ……痛っ」
 ボールが当たった場所が青く腫れている。
「打撲だな。霧矢ハニー、保健室へ連れて行ってやれ」
「はい、わかりました」

「うーん、これ以上投げない方がいいわね。しばらく安静にしておくこと」
 保健室の先生が湿布を巻きながら言う。
「そんな。蘭は今度ピッチャーをしなくちゃいけないんです」
「そう言われてもねぇ」
 私たちが手をこまねいていると、後ろで様子を見ていたジョニー先生が口を開いた。
「紫吹ハニー、しばらく湯治してみたらどうだ」
「湯治?」
「ああ。温泉に浸かれば、心も体も休まって、回復も早まるだろう」
「なるほど……温泉旅館のことを知れば、オーディションにも有利というわけですね」

「すみません、ジョニー先生。車出してもらっちゃって」
 私たちはジョニー先生と車で鬼怒川温泉へ向かった。
 学園からだったら、お昼までには着けるみたい。
「いいんだ。霧矢ハニーは、温泉旅館へ行くのは初めてか?」
「ええ、そうなんです。小学校の修学旅行も、ホテルでしたし」
「温泉はいいぞ。肌がすべすべになるし、なんといっても食事がいい! 新鮮な刺身が食えるし、鹿の肉なんかも食べさせてくれるところがあるぞ」
「へぇ、先生って意外と温泉好きなんですね」
 蘭が身を乗り出して聞く。やっぱり蘭は温泉とか好きみたい。
「ああ! 学園マザーも休みの時は、一緒に一泊二日で」
 と、言いかけたところでジョニー先生が咳払いをした。
「……今のは聞かなかったことにしてくれ」
「ふふ。もちろんです♪」

「えっ!? 温泉に入れないんですか?」
「遠いところまで来てくれたのにごめんなさいね」
 どうやらお湯を出すパイプが壊れてしまって、温泉に入れないみたい。
 どうしよう。せっかくやって来たのに。
「仕方ない。食事だけでも下調べにはなるだろう」
「蘭……」
「あっ、でも、野天湯でしたらありますよ」
「野天湯?」
「ええ。この山を越えたところに、温泉が湧き出ているところがあるんです。ちょっと歩きますけど、せっかくですから行ってみてはどうですか」
「ありがとうございます!」

 というわけで私たちは、山道を歩いて国の天然記念物である『湯沢噴泉塔』へ向かうことに。
 装備もばっちり整えて、いざ、野天湯へ!
「アイ、カツ、アイ、カツ」
「結構険しいところだな……」
 マップルの『山と高原地図』によれば、広河原の湯から湯沢噴泉塔が登山道として記載されずに、「広河原の湯から行くことができるが渓谷歩きで上級者向け」となっている。
 普段からジョギングやダンス体は鍛えてるけど、足元が不安定な場所で歩くのはけっこう大変。
「あとどれくらいかかるんだ?」
「えーと、二時間から三時間くらい?」
「そうか。暗くなる前に帰らないとな」
「そう思って、じゃーん! ヘッドライトを持ってきました♪」
「あおいは本当にこういうの好きだな……」
 森の中を歩くのは気持ちがいい。空気が澄んでいるし、吹き抜ける風が爽やか。
 チュチュチュと鳴く小鳥たちの声を聴きながら、パキリパキリと小枝を踏んで歩く。
 にじんだ汗が、心地よく乾いていく。

 噴泉塔までには、広河原と呼ばれる源泉がある。
 そこへ近づいていくにつれて、今までとは打って変わって川の音が聞こえる渓谷になっていく。
「地図によれば、この川を越える必要があるんだけど……」
「橋が見当たらないな」
 最近の豪雨で、橋が流されてしまったみたい。
「仕方ない。流れは速くないみたいだし、ズボンの裾をまくって渡るぞ」
「うん! アイ、カツ、アイ、カツ……うひー、冷たい♪」
「滑らないように気をつけろよ。っていうか、これ、アイカツか?」

 しばらく歩いて行くと、朽ちた木が登山道を塞いでいた。
「蘭、どうする? くぐるか、越えるか」
「私はくぐる」
 蘭が身をかがめて、木の下をくぐる。
「そっか。じゃあ私は越える」
 私は足を上げて、木を乗り越えた。
「なぁ、あおい」
「ん?」
「こんな時、いちごならどっちを選んでたと思う?」
「そうだなぁ……『パッキーンって、割っちゃえばいいんだよ!』とか言いながら、斧で一刀両断にしてたかも」
「ははは。ありえるな」

 広河原に着いた。
 源泉はコンクリートのますで囲われていて、そこから川べりへちょろちょろと流れ出た温泉が、誰かが石組みとブルーシートで作った小さな浴槽に溜まっている。
「それじゃあ入りますか♪」
「えっ、噴泉塔はまだなんだろ、もう入っちゃうのか」
「うん! 女将さんからもらったお弁当もあるし、ここらで休憩にしましょ」
「そうだな」
 泉質は硫化水素型。手元のpH計によれば、弱酸性といったところ。
 源泉の温度は五十度くらいだけど、浴槽は四十度弱のぬるめのお湯。
 登山で疲れた体にはちょうどいい感じ。
「あおい」
「うん」
「気持ちがいいな」
「そうだね……♪」
 しっとりとした海苔に包まれた鮭おにぎりと、地元の野菜で作られたらしいお新香がとてもおいしい。
 ゆっくりと空を流れる雲を見ながら温泉に浸かっていると、時を忘れそうになるけど、目的地はまだまだ先。がんばらなくっちゃ!

 広河原から噴泉塔までは残り一時間ほど。
 途中の橋も川に流されてたり、滑り落ちたら大けがをしそうな崖があったり……。
 でもなんとか最後の力を振り絞って、奥鬼怒温泉の湯沢噴泉塔へ到着!
「ついたー! お疲れさま!」
「お疲れ。あそこから温泉が湧き出ているんだな」
 炭酸カルシウムを豊富に含んだお湯が、噴泉塔と呼ばれる三角すい形の塔を形成している。
 そこから湧き出るお湯は熱くてとても触れられないけど、流れ出たお湯は近くで川と合流して、ちょうどいい温度になっているというわけ。
「蘭さん蘭さん! それじゃあ入っちゃいましょうか♪」
 持ってきたタオルを巻いて、早速入浴。
「はぁ~♪」
「温泉って、やっぱりいいよな。私の肘もすぐに治りそうだ」
 滝の音を聴きながら入る温泉は、格別です♪
「あおい」
「なあに」
「私、温泉になりたい」
「えっ?」
「いや、温泉ってさ、温かくて、ほっとするだろ。私にはいちごやあおいみたいなかわいさはないけど、応援してくれるみんなの心を温められるような、そんなアイドルになれたらな、って」
「蘭……!」
 私はなんだか感極まってしまって、蘭に抱き着いた。
「わっ! こらっ、抱きつくな! ……もおっ♪」


「あっと一人! あっと一人!」
 九回表。三対二、ツーアウト三塁、カウントノースリーのピンチ。
 マウンド上の蘭は、追い込まれていた。
 監督として参加していた私は、秘密兵器を投入すべく、タイムをかけた。
「タイム!」
「はぁっ、はぁっ……あおい」
「蘭、目を閉じて上を向いて」
「え? こ、こうか」
 言われた通りに蘭が目を閉じる。
 私はバッグからタオルを取り出し、蘭の顔へ乗せた。
「あ、温泉のにおいだ……♪」
「ふふふ、正解♪ 蘭、落ち着いて。蘭ならきっとできるわ。力を抜いて、思った通りに投げればきっと大丈夫」
「あおい……」
 温泉のお湯を含ませた濡れタオルで、蘭もちょっとリラックスできたみたい。
 肩の力が抜けて、笑顔も出てきた。
「試合が終わったら、また温泉入ろうね」
「そうだな。今度はいちごも呼ぼう」
 プレイ再開。
 ゆっくりと振りかぶり、体をひねりながら、大きく足をあげる。ムチのようにしなる腕から、矢のようにボールが放たれる。
「ストライク!」
 内角低めに入った。バッターは動けない。
 カウントワンスリー。
 蘭はもう一度振りかぶり、ボールを投げる。
「ストライク、ツー!」
 バットが空を切る。
 三対二、カウントツースリー、ツーアウト三塁。
 次の一球で、すべてが決まる。
「蘭……」
 祈るように手を合わせ、目を閉じる……、なんてことはできない。
 最後まで諦めずに、このチームを勝利へ導くんだ。
「蘭!」
 蘭とキャッチャーにサインを送る。
 一瞬首を横に振りかけた蘭だったけど、うなずいて、モーションに入る。
 大きく上げられた足が、マウンドの前に着地し、外角低めへボールが放たれる。
 その直後、蘭がバッターの目の前へ走る。
「ピッチャー!」
 狙い通り。ボコッ、と鈍い音を立ててバットにぶつかったボールは、蘭のグローブへと吸い込まれていく。
「ファースト!!」
 蘭がぎゅっと身を翻し、そのままファーストへ送球する。
「アウト! ゲームセット!」
「わあああ!!」
 試合終了。観客席から歓声が上がり、選手たち、もといアイドルたちがマウンドへと駆け寄っていく。
「やったね、蘭さん!」
「私たち、合格だよ!」
「ああ、ありがとう! みんなのおかげだ!」
「蘭、おめでとう」
「あおい!」
 合格を祝う号砲が空に放たれ、三筋の雲が、秋の空へ消えていった。

姉の歯ブラシを噛んだ日(宇和島拓哉版)

Twitterで1年くらい前に『姉の歯ブラシを噛んだ日』というお題で短編を書くことが流行っていたので、当時書いたものです。
 
togetterでまとめられている分は↓です。

「姉の歯ブラシを噛んだ日」の検索結果 - Togetterまとめ

 

(約1200文字)

                                            宇和島拓哉

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「たっくんがまた私の鉛筆噛んだぁ~!」
 持ち手に小さな歯型が刻まれたえんぴつを手に、姉ちゃんが泣いている。
またか、と言わんばかりにあきれた顔をしながら僕を叱りつける母さんと、
その母さんに叱られている僕を僕はまるで他人事のように俯瞰しながら、
僕は「どうしてこうなってしまったのだろう」とぼんやり考えていた。
 
 人の話を聞かないくせは今でも治っていないけど、何かを噛むくせは治った。
爪、くちびる、えんぴつ、髪の毛……クラスのムカつく奴の腕を噛んだことだってある。
でもそんな幼いくせも、中学の制服を着るころにはすっかり消え失せ、少しずつ大人に近づいていった。
 
 3つ上の姉が島を出る。と言っても、ずっと帰ってこないわけじゃない。
土日は朝イチの定期船で帰ってくるんだから、大したことじゃない。
ただ少し、平日に会えなくなるだけで、ただ少し、姉ちゃんが他人っぽくなるだけだ。
 
「たっくん、中学の授業むずかしくない?」
「たっくん、お弁当のたくあん残してない?」
「たっくん、女の子と仲良くできてる?」
 たっくん、たっくん、たっくん……中学の時はニキビ面で引っ込み思案だった姉ちゃんも、
高校に上がったら急に大人っぽくなって、友達もたくさんできた。
 それだけ時が経ったのに、姉ちゃんはまだ僕を子どもあつかいしてくる。
元々口数が少なかった僕はすぐ言い返せなくて、姉ちゃんにも、自分自身にもむかっ腹が立って、こう言ってやった。
 「うるさい」
 
 姉ちゃんがあまり家に帰らなくなった。フェリー会社が潰れそうになって定期船の値段が上がったのもあるけど、
外に恋人ができると女は帰らなくなるって、じいちゃんが言ってた。嘘だ、そんなことない。
 でも、じいちゃんの言ってたことは本当だった。花火大会のある夏の日、姉ちゃんが彼氏を連れて戻ってきた。
 モデルさんみたいに体が細くて、髪の毛が茶色で、でも腕の筋肉はすごくて、浴衣がすっごく似合ってる人だった。
 
 その日のご飯はいつもより豪華で、いつもよりお母さんの「オホホホ」が多くて、いつもよりお父さんが無口で、
いつもより、なんか、姉ちゃんのほっぺが、赤かった。
 
「たっくんもお姉ちゃんたちと花火大会来る? 毎年楽しみに」
「いい」
 ご飯が終わってすぐ、お姉ちゃんは花火大会に行こうとしたけど、僕は行く気になれなかった。
というか、邪魔できない。あんなにかっこよくてお似合いのカップルの間に、未だにクラスの女の子とちゃんと話せないような僕が、入れない。
 
そのあとのことは、あんまり覚えてない。いつの間にかベッドで寝てて、六尺花火のでっかい音で起きて、
パラパラ花火の音を聞きながらお風呂に入って、歯を磨いたくらい。
それと洗面所に初めて見る歯ブラシ入りのコップがあって、気持ち悪いって思うかもしれないけど
僕はなんだか無性にそうしたくなったから、ピンクの歯ブラシを、奥歯でギュッと噛んでやった。
 
うちの歯磨き粉の味じゃない、優しいミントの味がした。

池袋晶葉とイチャラブえっちする本 第1章

アイドルマスター シンデレラガールズに登場する池袋晶葉とのイチャラブです。

千葉ーザム氏(@barzam154__)の池袋晶葉ツイートに影響されて書きました。

zamlog 池袋晶葉イチャラブビジネス新書をあなたが読むべき8つの理由

 

2章以降は氏の刊行である『池袋晶葉イチャラブビジネス新書』を参考にしながら書こうと思います。

(杉流馬締)

 

(約9500文字)

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『ふふっ、気持ちいい?♡ 女の子みたいな声だしちゃってぇ♡』

 

 月はすっかり高くなり、時計の針が零時を回った頃。
 誰もがすやすやと寝入ってしまっている事務所の中で、アダルトチックな深夜バラエティを垂れ流すテレビが、少女の顔を青白く照らしている。


《キュラキュラキュラ》
「ん、うぅ……お水か、すまない」
 キャタピラ移動のからくり人形のような『おめざのお水ロボ』に、起き抜けの水分補給を勧められ、池袋晶葉は目を覚ます。
 眼鏡をかけ、コップに注がれた水をクイと飲み干した。

 

『年下の女の子におちん×んマッサージされて、気持ちいいんだぁ♡』
「な、なっ……なんて番組だ」
 破廉恥なセリフを繰り返すテレビを消す。ロボにコップを洗う機能は付けていないので、そのまま給湯室へ洗いに行く。

 薄暗い部屋の中を壁伝いに歩いていると、手の甲にふさふさとした飾り付けが触れる。晶葉はさっきまで事務所にいるアイドルたちとハロウィンパーティーの準備をしていたこと、それとその間気になっていたことを思い出した。
「(助手……いつも以上に忙しそうだったし、それに何か悩んでいる様子だったな)」


 池袋晶葉は346(ミシロ)プロダクション所属の絶賛売り出し中のアイドルで、現在はラジオ番組や小劇場の出演、また趣味を活かしたホビー雑誌の連載など、日々忙しい時間を送っている。
 その側には事務所に入った頃から苦楽を共にし、彼女が『助手』と呼ぶマネージャー、もといプロデューサーがいるのだが、ここ最近の彼の表情を察するに、どうやら何か悩みを抱えているらしい。
 彼女はそれが気がかりだった。

 

「ふああ、晶葉ちゃん? おはよーございます……」
 蛇口をきゅっとひねると、寝ぼけまなこのちひろが給湯室に入ってきた。彼女は346プロの事務員だ。
「ちひろか。起こしてしまったな」
「大丈夫ですよ。ホットミルク飲んだらまた寝ますから。……プロデューサーさん知りません?」
 ちひろがマグカップに牛乳を注ぎながら、プロデューサーのことを気にかける。
「掲示板には外回りの後に直帰、と書いてあった。私に報告もせず一人で帰るとは、大した助手だ」
 晶葉が唇を尖らせる。

 

 チン、とレンジがホットミルクのできあがりを知らせる。マグカップを持って、ちひろと晶葉は給湯室近くのソファに腰掛けた。
「そうなんですか。うーん、忙しいみたいですねぇ」
「うむ……忙しすぎて目でも回していなければよいが」
「そうですねぇ……うぅ、さむい」
 ちひろがズズ、とホットミルクをすすり、ソファへ横になって毛布をかぶる。パーティーにも使える広さのこの部屋は、暖房を切ってしまうと寒々しい。


「晶葉ちゃんも寝ましょう?」
「うむ。しかし助手のことが気になって、眠れなくてな」
「ふふ。晶葉ちゃんってプロデューサー大好きなんですね」
 月明かりに照らされたちひろの顔がふにっとゆるむ。
「すっ、すっ、好きだなんて……! ただ私はっ、まっとうに心配しているだけだ!」
「しーっ」
「あ……」
 ちひろにプロデューサーへの好意を見抜かれた晶葉は動揺し、同じ部屋でもアイドルたちが寝ていることを忘れ、思わず大きな声を出してしまう。
 晶葉は毛布を頭まで被り、赤く染まりだした頬を隠した。


「ふふ、そうですよね。でも確かに心配ですね」
「うむ。助手は最近疲れているようでな。疲れを癒してやったり、相談に乗ってやれればいいんだが」
「そうですねぇ。……疲れを癒やすにはやっぱり、コレじゃないですか」
 眠たそうにあくびをこらえたちひろは、晶葉へ向かって何かを揉む仕草をして見せた。
「コ、コレ……!?」
 晶葉には、その仕草が先ほどの破廉恥な深夜番組に重なって見えた。
「そう、コレです。まずは優しく全体を撫でて」
「全体を撫でて……」
 元に戻ってきたはずの晶葉の頬が、ふたたび赤らみを帯びてくる。
「『硬くなってるねぇ~♡』とか言いながら、ぐっ♡ ぐっ♡ としてあげて」
 ちひろが手を上下に動かすたびに、晶葉の視線も上下する。
「か、かたく……」
「ぎゅ~っ♡ っとしてあげれば、『あー、気持ちよかった!』ってなるはずです」
「『気持ちよかった』……ちひろ、それはやはり」
 と、何かを決意したような晶葉が生唾を飲み込むと、
「zZZ♪」
 昼寝が得意なちひろは、どうやら二度寝も得意らしく、すぐに寝入ってしまった。
「な、なるほど、うむ、そうだよな……」
 取り残された晶葉は、一人で納得しつつ、自らもソファへ横になった。
 ちひろが伝えたかったことはただの肩揉みで、彼女が横になってしまっているせいで、その仕草が男性のそれを揉む性的な行為に見えてしまっただけとも知らずに。

 

☆☆☆


 ハロウィンパーティー当日。
 晶葉を始めとしたアイドルたちは、飾り付けられた事務所の一室に集まっていた。
「晶葉ちゃんのところにはおばけが来たにぃ!?」
「あ、あぁ。ジャック・オ・ランタン・ロボが来たかな」
「にょわーーッ!!」
 アルコールの入っていないはずのシャンパンで酔った諸星きらりに晶葉が絡まれていると、隣にプロデューサーが座ってきた。
「ハッピーハロウィン、晶葉」
「おお、助手か。それよりきらりをどうにかしてくれないか」
 身長百八十五センチの巨体を誇るきらりに、百四十八センチの小さな晶葉が押し潰されそうになっている。


「こらこらきらり、いたずらするんじゃ……って、酒くさッ!?」
「んにぃ~♪」
 プロデューサーに引き剥がされたきらりが一人楽しそうに微笑む。酔っているようだ。
「ありがとう、助手」
「なんで酒なんか飲んでるんだ」
「どうやらちひろがジュースとお酒を間違えて渡してしまったようでな、この有り様だ」
「にょわーッ♪」
「そのちひろは」
 晶葉がクイとあごを向け、ソファで酔いつぶれているちひろを指す。
「……なるほど」
「ぷろでゅーさぁ~♪ プロデューサーは、ほんとは寂しいんだにぃ~?」
 ニンマリと微笑んだままのきらりがプロデューサーへ話しかける。
「寂しいって、何のことだ」
「だってぇ~、晶葉ちゃんがぁ~、プロデューサーを心配して」
「あわわ、きらり! 秘密の相談だと言ったろう!」
 晶葉があわててきらりの口を抑えようとするが、そのかわいらしく短い手はなかなか届かない。
「『一人暮らしが大変なのだろう』って言いながらぁ~、プロデューサーのおうちへ行く準備してたんだにぃ~」


「わ、私は最近助手の元気がないなぁ、と考えただけでな」
 晶葉がかああ、と顔を赤らめ、目を泳がせながら話す。
「はは、そんなことを考えていたのか。そうかそうか、ありがとう晶葉」
「で、ではこの『家事手伝いロボ3号』と共に!」
「いや、しかし担当アイドルとはいえ、女の子を家に呼ぶのはまずい。だか、ら……あれ?」
 突然めまいのようなものを覚え、プロデューサーが前のめりの姿勢になる。
「どうした?」
「いや、いきなりめまいが……うっ!」
 勢いあまって、プロデューサーがテーブルのへりに頭をぶつける。
「大丈夫か!?」
 晶葉があわてて体を支えた。


「す、すまん、間違えて酒を飲んだようだ」
「あぁ、こっちのカップもそうだったのか。助手よ、すまない」
「いや、大丈夫だ。それより俺はもう帰るから、」
 と言ってプロデューサーが立ち上がった瞬間、また体をよろけさせた。
「おいおい」
「すまん、俺はこういう酔い方をするから、飲まないようにしてたんだが」
「とにかく助手一人では無理だろう」
 晶葉は部屋を見回したが、プロデューサーを送れそうな大人は買い出しに行ったか、酔いつぶれてしまっていた。
「タクシーで送っていく」
「すまない……」
 プロデューサーは小柄な晶葉に肩を貸してもらい、彼女とともにタクシーで帰宅することとなった。

 

☆☆☆
「大丈夫か?」
 彼女の肩にもたれかかり、赤ん坊のよちよち歩きのようになんとか歩を進めるプロデューサー。
「う、うん……鍵は、バッグのサイドポケットに入ってる、から……」
 晶葉はなんとか彼を導き、鍵を開けてやる。
 暗い玄関先へプロデューサーの腰を降ろしてやり、電気をつけると、彼女の目に信じられない光景が映った。
「……助手よ、なんだこの部屋は」
「す、すまない」
 くしゃくしゃに丸められたままキッチンの隅へ放置されているスーパーの袋、ペンやティッシュなどの企業のノベルティグッズがあふれるほどに満載されたダンボール。
 はんだ付けを失敗したまま無残に葬られた基板たちの墓、干したはいいがアイロンもかけられずにカーテンレールへ吊るされたままのワイシャツ。
 レールで高さを調節できる機能はついているが、肝心の本が整理されていないため、さまざまな本をあふれさせたままになっている本棚。
 プロデューサーの部屋は、典型的な一人暮らしの男の部屋だった。

 

「あ、晶葉。これはだな、うぷっ……」
「言うな。分かってるから。というか、この部屋をさらに生々しい有機物で汚されてはたまらん」
 晶葉は目を閉じ、腕を組みながらうーんとうなる。
「よし。ここは私がなんとかする。まずはこの水を飲むんだ」
 何かをひらめいた晶葉の目がキラリと光る。
 放置されていた2リットルのペットボトルへ水をくみ、万が一のためにエチケット袋を用意し、プロデューサーへ差し出す。
「体内のアルコールは呼気、汗、そして尿から排出される。そのためには水分をできる限り多く摂取することが重要だ」
「なるほど、論理的だ」
「だから気持ち悪くてもこれを飲み干せ。私とロボットがその間に部屋を片付けてやる」
 晶葉の口角がニッと上がり、祖父からかわいらしい人形をもらった少女のような笑顔をつくった。

 そしてこんなこともあろうかと事務所に待機させられていたロボたちが、勢いよくドアを開ける。
「『おかたづけロボ1号』とその『2号』、『3号』だ。ゆけっ!」
 晶葉が号令をかけると、小さくともパワフルなロボットたちはその脚を動かし、各々の役割を果たすべく部屋へと散っていく。
 彼らには搭載された光学センサーでモノやゴミをスキャンし、収納可能なスペースとともにそれをデータベース化し、内容を精査し、最も効率的でまた取り出しもしやすい配置で片付けていく機能が搭載されている。
「うむ……♪」
 てきぱきと働くロボットたちを見て、晶葉が得意気にうなずいた。


 その様子を見て、プロデューサーがつぶやく。
「晶葉は、いい奥さんになれるな」
「な、なっ……!」
 少女の顔が笑顔から一転、戸惑いと羞恥を合わせた表情へと変わる。
 頬を赤らめ、手に持っていたタブレット端末を忙しそうに繰る。
「変なことを言ってないで、風呂にでも入ってこい!!」
 まったく、と息を吐きながら、晶葉はプロデューサーとの思い出に頭を巡らす。
「助手はいつもそうだ。何でもないようなときにふわりと笑顔を見せたと思ったら、キザなセリフを平気で言う。恥ずかしくないのか、まったく」

 

 プロデューサーとの出会いは1年前、秋葉原の電子工作カフェでのことだった。
 デ○ゴスティーニの電子工作キットを買ったはいいが、持ち前の不器用さでついに完成させることができなかったちひろさんが、プロデューサーに泣きついたのだ。
 そして電子工作の経験のなかったプロデューサーは、キットを電子工作カフェへ持ち込み、教えを請おうとした。
 その時、アイドル育成の能力を目覚めさせていたプロデューサーの目に映ったのが、池袋晶葉だった。
「はんだは適量流し込むのがコツだ。ああ、あまり長くはんだごてを足へ接してはいけない。トランジスタは熱に弱いからな。だからこのワニグチクリップを使いながら……」
 晶葉はふふんと鼻を鳴らしながら、しかし丁寧に優しく、プロデューサーへ電子工作の基礎を教えた。
 同じ眼鏡同士で波長があったのか、二人はカフェでよく会うようになり、そして秋葉原の街へ馴染んでいった。
 その中で晶葉の魅力に気づいたプロデューサーは、あるロボットコンテストの最中、彼女をスカウトした。
 他ならぬプロデューサーからの申し出に、目をキラキラとさせ、晶葉は大きくうなずいた。
「よし! 皆の度肝を抜くロボを作って、そしてアイドルとしてもトップになって、私たちの才能を証明するぞ!」

 

 脳内でのろけ、にへらと笑う晶葉だったが、風呂場からバタリという音が聞こえてから、重大な失敗に気づいた。
「助手!?」
 プロデューサーは自分で動けないほどに泥酔していたのに、一人で風呂へ行かせてしまったのだ。
 案の定、彼は風呂場に大の字で仰向けに倒れていた。
 もちろん、男性の証を見せつけながら。
「ッ……!」
 それを目の当たりにしてしまった晶葉は頬を赤らめさせながらたじろいだが、それ以上に彼を助けることが先だった。
 すぐに駆け寄り、体を抱き起こす。
「怪我はないか!?」
「あ、あぁ……頭は打ってない」
「そうか、驚いたぞ」


 晶葉は安心して肩をなでおろしたが、裸のプロデューサーを抱きとめていることに気付き、また頬を赤らめさせながら、視線を逸らして言った。
「そ、それより、少し前を隠してくれないか」
「あっ、うわっ、すまん! 今日は体を拭うだけにするから」
 壁にかかっていた体洗いで、プロデューサーが前を隠す。
「いや、それではいけないだろう。そうだな……今日はわ、私が洗ってやろう」
 晶葉は意を決して言った。恥ずかしさもあったが、それよりもプロデューサーの役に立ちたかった。
「えっ、いや、それは」
「私のことなら大丈夫だ。私と君との仲だろう、い、今さら隠すことなんて」
 と、隠された前を一瞬見つめて、また目を逸らしながら
「ないだろう」
「うん……そうだな」

 

 晶葉は石鹸を泡立て、イスに腰掛けたプロデューサーの背中を洗う。
 その背中は大きくたくましく、普段のスーツ姿よりも男らしく見え、晶葉の胸をドキドキと刺激した。
「助手は普段、料理はするのか?」
「前はしてたんだけどな、最近はレトルトばかりだ」
「そうか。忙しいのもわかるが、栄養状態が心配だな」
 晶葉とプロデューサーが、他愛のない会話を交わす。
「そうだ、今度私が『お料理ロボ』でも作って」
 と、言いかけながら胸を洗おうとしたとき、プロデューサーの股へかけられたタオルが盛り上がっていることに気付いた。
 晶葉の動きが止まる。
「あげ、よう……」
「晶葉ッ、いや、これはッ」
 晶葉の戸惑いに気づいた彼は思わずあわてたが、その動きでタオルがはらりとはだけてしまった。
 プロデューサーの見事な『疲れマラ』があらわになる。


「すまん、晶葉ッ」
 すると、それを目の当たりにした晶葉は堅くなった表情のまま視線だけ下げ、
「助手よ、これは」
 とつぶやいた。
 自らの不注意で泥酔してしまったあげく、担当アイドルに介抱され、さらには彼女へ恥部まで晒してしまったプロデューサー。
 彼の心はすでにひどく疲れきっていたが、それとともに晶葉の視線を感じると、さらにたくましくいきり立とうとするものがそこにはあった。
「これは、だな、その、男性の生理現象というか、だな」
 肉柱を情けなくビクつかせ、口をパクつかせながら言い訳をする。
 池袋晶葉は十四歳、中学二年生だ。思春期のまっただ中であり、学校では当然保健体育の授業を受けている。
 男性が生殖器を赤黒く充血させ、その勇猛さを誇示することの意味は、彼女も当然知っている。
 そして彼女は自らが担当するアイドルであり、かけがえのない『パートナー』として共に時間を過ごしてきた大切な存在でもある。
 それだけに、プロデューサーの焦りは大きかった。


 体中の筋肉がこわばり、脂汗がにじむ。思考が真っ白になり、走馬灯に似た回想が頭の中を駆けめぐる。
 腰が抜け、立ち上がろうにも立ち上がれない。
「だからッ、決して、晶葉に、その」
 言い訳にもならない言い訳を繰り返していたプロデューサーだったが、晶葉がゴクンと唾を飲み、再び言葉をつむぐ。
「……わかって、いるぞ」
 その表情は相変わらず堅いままだったが、声のトーンは優しく、解きほぐすようなものに聞こえた。
「晶、葉……?」
「わかっている」
「わかってる、って」
「私は最近の助手が心配でな、ちひろに聞いて、いろいろと教えてもらったんだ」
 晶葉が膝立ちでゆっくりと彼の前へ移動する。
「ちょ、ちょ、ちょっと」
「君は疲れているんだ。だから、こういう時くらい世話になるべきだ」
 晶葉は心を決め、口を一文字に結び、頬を赤く染めながら、プロデューサーを見つめた。
 そして恐る恐るといった手つきで、彼のマイクを握ろうとする。


「晶葉ッ! それはッ!」
 プロデューサーが思わず止めようとしたが、体がふらつき、後ろへ倒れそうになる。
 なんとか両手をつくことはできたが、晶葉の体を足で挟み込み、彼女へ向かって腰を突き出すような体勢となってしまった。
 彼の顔も熱く紅潮し、恥ずかしさと情けなさのような電流が体中をビリビリと駆けめぐる。
 晶葉の決意はそれでも変わらず、プロデューサーへ優しく語りかける。
「う、うむ。では、触るぞ……」
「晶葉ッ」
 圧力の高い血流を流し込まれフルフルと震える雄首に、細長の白指が触れる。
「あっ」
 牛の乳を搾るように人差し指から順に包み込まれ、下半身の中心からじんわりとぬくもりが伝わる。
「熱い……」
 今にもはちきれそうな胸の高鳴りを抑えたまま、晶葉が彼の温度に驚きを見せる。
 彼の小さく大きな化身は晶葉のかわいらしい手の中で猛々しく隆起し、別の生き物のようにその身を跳ねさせている。
「おち×ちんとは、こんなに熱いものなのだな……」
「あ、あぁ」
 口角をわずかに上げ、自身と彼の緊張をやわらげてやるように晶葉が微笑む。
 プロデューサーは彼女の微笑みの中に、いつもの少女らしいそれから受けるおだやかな感情とはちがう、胸の奥を激しく突き動かすものを感じた。
 鉄龍がさらに雄々しく天を目指す。

 

 二人はそのまましばらく見つめ合っていたが、事態のまずさに気づいたプロデューサーが、腰を動かして彼女の手の中から抜けだそうとする。
「晶葉」
 だが、それが裏目に出てしまった。
「あうッ」
 彼の赤棒が彼女の柔らかな手のひらに触れ、心地よい電流が下半身を刺激する。
「晶葉ッ、その手を」
「気持ち、いいのか?」
 プロデューサーの反応に気づいた晶葉が、子供のように問いかける。
「あ、あぁ……だから、まずいから、その」
「わかった。手を上下に動かせばいいんだな」
「晶葉ッ」
 晶葉の右手がぎこちなく肉岩を抱いたまま、ゆっくりと上下に動き出した。
「くッ、ああっ」
 手と肌は触れるか触れないかの距離だったが、その柔らかな感覚が逆に心地よく、思わず声が出てしまう。
「痛いのか?」
 苦痛とも見える表情をしたプロデューサーに、晶葉が心配して声をかけた。
 額に汗を浮かべたプロデューサーが、必死な笑顔で答える。
「い、いや、気持ちが、いいんだ……ああッ」
「ふふ、そうだったのか」
「だからッ、あう」
 晶葉は彼の言葉を聞いて安心し、優しく微笑む。
 そしてその行為が彼を喜ばせていると思うと、彼女の胸にじんわりとあたたかいものが満ちた。


 晶葉は彼が愛おしくなり、いたずらっぽく彼を強く握ってみる。
「あッ」
「そうか、助手はこういうのが好きなんだな。ふふ」
 びくん、と手の中で大魚が跳ね、苦悶の表情を浮かべる彼の本心を覗かせる。
 晶葉はふわりと微笑みながら、さらに刺激を与え続ける。
「あッ、はあッ」
「ん? これは……」
 晶葉は彼の先端がぬらぬらと光っていることに気付き、指の先端ですくい取る。
 ぬるぬるとした透明な分泌液が、晶葉の細指の間で糸を引いていた。
「それは」
「ふふ、知っているぞ、この前ネットで調べたんだ。カウパー氏腺液、通称我慢汁と呼ばれているものだろう」
「そうだ……」
「気持ちよかったのか?」
「あぁ……」
「ふふ。うれしいぞ」
 頬を赤く染めた晶葉が、ニカッと白い歯を見せて微笑む。
 プロデューサーとアイドルは、仕事の同僚であり、チームであり、仲間の関係だ。
 だからこんな行為は今すぐに止めなければならない。
 しかし、彼女が優しく微笑むたびにプロデューサーとしての理性は薄れ、(もっとしてほしい)という雄の欲求が顔を覗かせる。


 その間にも我慢汁はダラダラと肉塔の先端からあふれ、晶葉の手を濡らす。
「すごい、こんなに汁が」
 湯気の充満するバスルームに、ぐちゅぐちゅという水音が卑猥に響く。
 あふれ出るぬるぬるの我慢汁と晶葉のしっとりとした手汗が潤滑油の役目を果たし、彼の肉風船をするすると愛撫させる。
 彼のそれはさらに膨らみを増し、ピンク色の亀頭が艶やかになっていく。
「晶葉っ、それ以上はっ」
 プロデューサーが必死に喘ぐが、無理な体勢なので動くことができない。
 押し寄せる激しい快楽の波が、彼の意識を沖まで押し流し、底の見えない深い脈動へ引きずり込む。
 理性と本能が火花を散らしながらぶつかり合い、擦り切れ、破れ、強い鼓動が肺を押しつぶし、すべての意識が下半身へ集中する。


「はぁッ! ぐうう……」
 歯を食いしばり、こらえるたびに我慢汁があふれる。
 とめどなく水分が供給され、彼女の手は濡れ、その動きをさらに滑らかにする。
 晶葉は動きに慣れてきたのか、緩急をつけたり、挑発を含んだような上目遣いの微笑みを投げかけてくる。
 彼女の体にも軽く汗がにじみ、腋からは甘く切ない女性ホルモンが分泌される。
「ふふ、そんなに気持ちがいいのか?♪」
 次第に皮も剥け、艶やかな亀頭がすべてあらわになる。
 敏感なそれへ粘液が絡み、細指が巻きつく。
 薄く上品だがキメの細かい桃色の唇を軽く開け、「んっ、ふっ、んっ」と小刻みな吐息を晶葉が見せる。
 その風が熱く灼けた亀頭へそよぎ、彼の硬度はさらに高まっていく。
「あッ、ああッ……!」
「そうか、これも刺激したらいいのだな」
 晶葉はキュウと締まった睾丸の存在に気付く。
 すでに我慢汁でぬらぬらに照り光っているそれを、晶葉は左手でやさしく包む。
「ふぅぅッ」
 手のひらでコロコロと転がしてみたり、ふわふわと揉み包む。
 微弱だが的確な刺激を繰り返し、彼の射精感を確実に高めていく。


「気持ちいいのか?」
「あ、あぁッ、すご、く」
「ふふ、がんばれ♪」
 母性が芽生えたのか、プロデューサーのこらえる表情がかわいく見えた。
 胸がトクンとときめき、もっともっと気持ちよくしてあげたくなる。
「晶葉ッ、だめだッ」
「なにがだめなんだ?」
「もうッ、出、出ちゃうッ、からッ……!」
 プロデューサーはもう限界だった。
 あふれ出る我慢汁と細くかわいらしい手でゆるゆると刺激され、彼の理性は悲鳴を上げる。
 内ももの筋肉がこわばり、睾丸がさらに収縮する。
 奥歯がガチガチと鳴り、羞恥と快楽と背徳がぐちゃぐちゃに混ざり合い、射精以外の何事も考えられなくなる。
「出る……? あぁ、ふふ。いいぞ。たくさん出すといい♪」
「ぐああッ……!」


 俺は池袋晶葉の担当プロデューサーだ。今まで彼女と順調にこのアイドル生活を送ってきた。
 晶葉はまだ幼く、十四歳の中学二年生。そんな女の子に、一回りも上の男が手コキをされ、情けなく喘いでいる。
 ビクンビクンと腰を跳ねさせ、無様な痴態を晒している。
 このままではいけない。止めなければ。
 でも、このまま思い切り――射精したい――ッ!


「あッ、ああッ……! 晶葉ッ、出る、出すッ、あぁッ……!」
 自らの意思とは
「ふッ、ふッ♪ いいぞ♪ たくさん、出せッ……♥」
「あッ……ああああぁぁああああーーッ!!!!!」
 ドクッ、ビクン、と激流があふれ、大河の龍が怒りをあらわす。
「んッ……!」
 吐き出された劣情の粘液は、かわいらしい少女の顔を汚し、なおもその勢いを止めない。
「ぐああッ……! ふうッ……!」
 手や顔からこぼれ落ちた白濁は、ボタボタと質量を持って晶葉の太ももや床へ降り注ぐ。
 彼の生あたたかいものを浴びた晶葉は、胸がさらに熱くなっていくのを感じながら、おだやかな微笑みをたたえた。
「あぁ、これが、助手の……♥」

 

 激しい脈動のあと、全身から力が抜け、だらりと脱力したプロデューサーは、そのままバスルームへ倒れこんでしまった。

アイカツ! 最終話Cパート

2013年1月31日に、あおい姐さんの誕生日用に書いたものです。

(当時はまだ最終話が放送されていませんでした)

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「アイ、カツ、アイ、カツ」
「いちご、残りあと一キロよ。頑張って!」
「アイ! カツ! アイ! カツ! アイ! カツ!」

 ペースを速めるいちごに合わせて、自転車のペダルをくるくると回す。二人の口から白い吐息が漏れる。冷たい風が頬を刺す。

 ふと横を見れば、大人らしい顔つきになったいちごがいる。そっか、あれからもう五年半も経ったんだ。

 

 私といちごがアイドル養成学校であるスターライト学園に入学したのは五年前の春。元々アイドル全般にとても興味があった私、トップアイドル・神崎美月ちゃんのライブを見て、アイドルに目覚めたいちご。

 そんな二人に編入試験の知らせが舞い込んできて、受験することを決心。特訓の末に高倍率の試験を勝ち抜き、見事合格! 二人で一緒にアイドルの世界へ足を踏み入れた……。

 というのも今は昔。いちごはこうしてトップアイドル・星宮いちご、そして私はそのチーフマネージャー兼トータルプロデューサー兼アイドルプロダクション社長として忙しい日々を送っているわけ。

「いちごちゃーん! そろそろ本番!」
「はーい!」

 もちろんトントン拍子にここまで来られたわけじゃない。アイドルを全く知らなかったいちご。アイドルを知りすぎていた私。

 その種類はちがうにせよ、お互いの苦労は計りしれないものがあったはず。悩む暇なんてなかったけど、それでも毎日が厳しくて、泣き出しそうになる時も何度だってあった。

「それで私、ガチガチに緊張しちゃって。イケナイコンビの目の前でお茶をこぼしそうになっちゃったんですよ」

「 HAHAHA ! ちょっと抜けてるスター宮らしいエピソードだ!」

「もうっ、からかわないでくださいよ~」

 

 毎朝五キロのランニング。栄養士顔負けのカロリー制限。授業中に居眠りや考え事をしたら厳しいペナルティ。アイドル関係の書籍や雑誌は買えるだけ買い込んで情報収集。

 娯楽にさえ実用を求め、およそ趣味らしい趣味は一切禁止。親族はもちろん、ご近所や知り合いの知り合いのそのまた知り合いにまでコネクションを作る。アイドルに憧れてアイドルになりたくてアイドルを目指して、私はアイドルになった。

 

 それでも私は敵わなかった。星宮いちごにはまったく敵わなかった。本当の『アイドル』になれたのはいちご。身も心も青春も、全てを投げ打って臨んだアイドルカツドウ。

 私からアイドルを取ったら何も残らなくなるほどの覚悟で走り続けたアイドルカツドウ。もちろん、いちごとだって仲良しこよしでアイドルをやろうだなんて考えなかった。私は本気でアイドルカツドウをしたんだ。

 

「あおいー。三曲目と四曲目の演出、どう考えたらいいかなぁ?」
「そうねぇ。その二曲は夢を叶えた女の子の気持ちを歌った曲なんだから、爽やかに、でも暗い気持ちも明るい気持ちも混ぜあわせた感じで組み合わせていけばいいんじゃないかしら」
「そっか! ありがとうあおい!」
 ――悔しかった。こんなに頑張っても、どんなに頑張ってもだめなのか。どうして私じゃないんだ、って。悔しくて悔しくて、でもそう考えてしまう自分が情けなくて。

 せめていちごの前ではいつもと同じ笑顔でいようとしたのに、ふっといろんな感情が湧きあがってきて、わっと泣いてしまったこともあった。
「こののり弁、美味しい」
「でしょっ! お母さんと私で『いつもがんばってくれてるあおいちゃんのために』って作ったんだよ!」

 

 でもやっぱり、そうやって私が頑張り続けられたのもいちごのおかげなんだと思う。いつもそばにいて、いつも明るい笑顔を見せてくれた。悩んだ時だっていつも前向きで、いつも私を導いてくれる。いちごはそんな存在だった。
 『大切なものはすぐそばにある』とよく言われるけれど、どうして私はそんなことにも気付けなかったんだろう。それほどいちごが大切なものだったのかな。

「ふふっ、そうなんだ。とっても美味しかったわ」
「よかった! これで明日のリハもがんばれるかな?」
「そうね、きっと頑張れるわ。ありがとう、いちご」

 

 だから私は、大切なものを大切にしようと思った。
 スターライト学園卒業と同時に、既にかなりのレベルのアイドルとして活躍していたいちごを引っ張り、アイドルプロダクションを設立。

 学校法人としての性格上、行いにくかったサポートやプロデュースを惜しみなく実行するためだ。世界中を飛び回り有能な人材を招集。最先端のアイカツシステムを導入し、ライブ演出の総合的なレベルを向上。産官学の連携を図り、アイドルの教育性や医療的価値を研究。社会的認知や地位を確立。

 さまざまな企業と提携し、誰でも手軽にライブを視聴できる環境を整備。人々の生活や人生の中へアイドルを組み込み、かつアイドルを憧れの存在とすべく私は奔走した。

 

「あおい、もしかして疲れてる?」
「えっ!? 全然そんなことないわよ。ほらね、元気元気!」
「嘘。私わかるもん」

 そうしていちごはトップアイドルになった。ううん、いちごはそうしたからなったんじゃない、なるべくしてなったんだと思う。だっていちごからはアイドルの匂いがしたんだもの。

 その匂いを力に変えたのはいちご自身の努力。私はそれの手助けをしただけ。

「……そうね、いちごには嘘つけないものね。うん、確かにちょっとだるだるブルーかな」
「やっぱり。じゃあ今日は一緒に寝よ!」
「ふふっ、わかったわ。ありがとういちご」

 もう決めたはずなのに、行く先を悩んで悩んで立ち止まりそうになる日もあった。実を言うと、今でも悩んでる。これが本当に私のやるべきことなのか、これで本当に私はいいのかって。

 

 でも、いちごを見ているとなんだか、これでいいんだと思えてくる。だって、それが私の――
「うぅ、あおい~」
「どうしたの? 体調悪いの? って、なんだ寝言か」
「むにゃむにゃ……あおい……いつもありがとう」
 そう、答えなんだから!

アイカツ!勝手にノベライズ 第1話『私がアイドルになっても?』

アイカツ!、始まりますっ!
フフッヒ♪

☆☆☆
「ハイパーメガハンバーグ弁当ひとつ!」
「はーい、メガハンいっちょ♪」
 ママ自慢の大きなハンバーグが、ジューと音を立ててフライパンで焼かれていく。その後ろでらいちがトマトを、私がキャベツを切ってお手伝いをする。キャベツの千切りは難しいけど、リズムよくトントントン♪ と切るのがコツなんだ。
「いちご、ご飯お願い」
「はい!」
 私の名前は星宮いちご! ごくごく普通の中学一年生。おうちでママがお弁当屋さんをやってるから、こうして私と弟のらいちで一緒にお手伝いをしてるんだ。今はいつも来てくれるお兄さんのお弁当を作ってるところ。
 お弁当の箱に、たっぷりご飯を敷き詰める。でもぎゅっぎゅっ、と押し固めたらご飯が硬くなっちゃうから、おしゃもじを軽く持って、ふわっとご飯を乗せていくんだ。
 ご飯を乗せたら、そこにあつあつのハンバーグを乗せて、周りにブロッコリーやウインナーを飾る。そこにケチャップをかければ……モヒカンと唇、それに大きなおめめがうりふたつの、お客さんそっくりなお弁当が完成!

「お待たせしました。いつもありがとうございます♪」
「ども」
「ありがとうございます!」
 にこにこ笑顔でお客さんを送り出す。隣のらいちは似てたでしょ、今の! と得意そうにしてる。かなりね、と言って二人で笑い合う。
「さぁ、仕込みしちゃおう!」
 そうして野菜の下ごしらえをしたり、スープをぐつぐつ煮たり。お手伝いはちょっと大変だけど、おいしいお弁当が作れた時は、本当にうれしいんだ!
 でも、この時の私は想像していなかった。まさか私が、キャベツを運んでいる私が、スープをかき混ぜている私が、アイドルになるだなんて!

☆☆☆
 夕方。水曜日のこの時間は、お店がちょっと早く閉まるんだ。だから私も念入りにお掃除をして、明日もおいしいお弁当が作れるように準備するの。
「よしっ。もう大丈夫よ、いちご。あとは私がやるから」
「うん……もうちょっと!」
「いつも手伝ってくれてありがとうね。でもいちご、うちのことばっかりじゃなくて、いつか自分のやりたいことを見つけてね」
「えっ? なに、急に」
 お掃除に夢中だったけど、ママが急に改まって話しだしたからびっくりしちゃった。なんだろう。
「ママは昔からお弁当屋さんやりたかったの。だからいちごにも、何か夢を見つけてほしいな、って」
「私の夢? なにかな……?」
 ほっぺに人差し指を当てて、うーん、と考えてみる。夢? 私の夢? うーん……あっ!
「私の夢って、お弁当屋さんかも!」
「えっ」
「ママ、毎日楽しそうだし、私も楽しいし! 大人になっても、一緒にお弁当屋さんするのが夢かな」
 ママは最初びっくりした顔をしてたけど、今はいつもの笑顔になった。
「ふふっ。ならママもまだまだ頑張らなきゃ!」
「うん!」
 よかった! これからもお手伝い頑張らなくちゃ!
 
☆☆☆
「らいち、ただいま!」
「うわわわわ! お、おかえり」
 部屋に入ったら、イスに座ってたらいちがびっくりして、さっきまで見てたなにかを隠して焦ってる。なんだろう?
「お姉ちゃんお店手伝ってるんじゃなかったの……?」
 右に左に右に左に、私が覗きこもうとすると、らいちが体を傾けて、なにかを隠しながら苦笑い。うーん、気になるなぁ……えいっ!
「うわっ! ……あ~!」
「わっ! ごめんね!」
 ジャンプして近づいてきた私に、らいちがびっくりしてコップのジュースを机にこぼしちゃった。ごめん! すぐティッシュで拭かなきゃ……って、らいちが見てたのって、神崎美月のブロマイド?
「これって、神崎美月?」
「いいでしょ、別に」
「いいけど……好きなの?」
「いいでしょ別に!」
「いいけど……こぼしちゃったのに?」
「いいでしょ別に!」
「いいの?」
「んんぅ~、よくなぁ~い!! はぁ……」
 
 せっかく集めたのに……って、らいちがうなだれちゃった。
「らいち、アイドル好きだったんだ。知らなかった」
「ただのアイドルじゃないよ、神崎美月はトップアイドルだもん! ライブにだって行きたいけどさ、チケット、全然ないんだって」
 らいち、アイドルっていうか、神崎美月がそんなに好きだったんだ。ごめんね。うぅ~ん、このままじゃかわいそう……そうだ!
「なんとかならないか、明日聞いてみるよ。あおいちゃん、アイドル詳しいから!」
 
☆☆☆
 数学の授業おわり! そうだ、あおいにアイドルのこと聞いてみなくちゃ。
「あっ、そういえばあおい」
「えっ?」
「うちの弟が、アイドルのライブに行きたいって言ってるんだけどさ」
「穏やかじゃないわね。いちごからアイドルの話が出るなんて」
「うん。私って言うより、弟のことなんだけどね。昨日私が、らいちの持ってた神崎美月のブロマイドにジュースこぼしちゃって」
 と、言いかけたとき、あおいが勢いよくイスから立ち上がった!
「行きましょう! 力になるわ!」
 いつもはクールなあおいって、アイドルのことになるとこんなに熱くなるんだ……。
 
☆☆☆
「話は聞かせてもらったわ!」
「……誰?」
 夕方。いきなり部屋に現れたあおいに、らいちがびっくりしてる。
「私の親友、霧矢あおいちゃん。アイドルがすっごく好きなんだよ」
「好きというより、もはや研究対象ね。そしてこれ! 神崎美月ちゃんの切り抜き。私の布教用のコレクションを少しあげるわ。あとポスターも!」
 あおいがアルバムやポスターがぎっしり詰まった紙袋をらいちへ手渡す。それを見たらいちは、思わず大きな声を上げた。
「うわぁぁ~……! 美月ちゃんいっぱい! ありがとう!」
 アイドル好き同士、通じ合うものがあるのかな。二人とも、すっごく嬉しそう。
「あのね。らいち、神崎美月のライブに行きたいんだって。でも、ライブならテレビとかでも観られると思うんだけど」
「いやいやいや!」
 あおいとらいちが声を揃える。
「ライブは生じゃないと。まだ観たことないけど……」
 そうなんだ。私観たことないから分からなかった。
「弟くんの言うとおり、ライブは生が基本」
「ですよね、姐さん!」
「君の姉さんはいちご」
「クール!」
「でも、神崎美月様のライブのチケットは、まったくもって手に入らない」
 ですよね……と、うなだれるらいち。でも、あおいが続けてこう言った。
「そこで、耳寄りな情報があるの」
 
「どぅえぇぇ~~!? ライブ観られるの!?」
「ふふーん♪」
 なんで? なんで? と、家中に響くくらい、らいちがはしゃいでる。でも、確かになんでだろう?
「チケットをもらえるツテがないか探してみたの」
「うんうん!」
「そうしたら、パパのいとこの娘のはとこの知り合いが、同窓会で数十年ぶりに再会した人の、息子が昔入っていた野球チームのマネージャーのママの弟が、旅行先のコートジボワールですれ違ったフランス人旅行者を、日本に来た時に面倒見た浅草に住んでるおばあちゃんの姪っ子のパパが放送局で働いていたおかげで、ライブチケットをもらえることになった! それも、タダで3枚!」
「うぅ~……本当!?」
「ということで、一緒に行きましょう! 美月様のライブへ!」
「お~!」
 それにしても、あおいったらすごく一生懸命探してくれたんだね。
 
☆☆☆
「お姉ちゃん、いよいよ明日だね。美月様のライブ!」
「うん」
 夜。二段ベッドの上で寝ているらいちが、興奮したようすで話し続ける。
「絶対すごいんだよ……ドキドキするね」
「うん。っていうか、もう寝よう?」
「無理!」
 ギシッと上のベッドがきしんで、急に静かになった。どうしたのかな、とはしごを登ってようすを見てみると
「ちょっ、なにしてんの!?」
 らいちがパジャマのままリュックを背負って、神崎美月のポスターの前で正座していた。らいちったら、もう。
「だって、ドキドキして眠れないし、起きられなかったら大変だし……」
「でも寝ないと。ね?」
 私はらいちの頭を撫でてあげた。それで少し落ち着いたのか、うん、と言って布団へ入っていった。よしよし。寝不足のままライブへ行ったって、楽しくないだろうしね。
 でも、アイドルって、眠れなくなっちゃうほどすごいのかな?
 
☆☆☆
「うわ~! すごーい! 会場おっきーい!」
「急ぎましょう。もうすぐ開演よ」
 神崎美月のライブ当日。人がたくさんいるし、物販や展示もあって、まるでお祭りみたい! でもでもあおいの言うとおり、開演まであと10分ちょっとしかないから、急がなくちゃ!
 
「こちらでチケットをお出しください」
「どうぞ。楽しんでください!」
 チケットを渡すと、半分になったヘッドフォンにアンテナをつけたような、不思議なものを係の人が手渡してくれた。なんだろう、これ。
「そのアンテナを頭につけて、観客の興奮度を測るの」
「興奮度?」
「ライブを観れば分かるわ。さぁ、私たちの席はあっちよ」
 観客席への通路を抜けると、観客で埋め尽くされた広いグラウンドと、ぽっかり空いた天井の穴から、グラウンドに負けないくらい大きくてきれいな夕焼けの空が見える、神崎美月のライブ会場がそこにはあった!
 その大きさに思わず見とれていると、神崎美月の曲のインストが流れだして、みんなが口々に、そろそろ始まるね! と話し出した。
「行こう! 早く!」
 と、らいちに手を引かれて席についた瞬間、オレンジ色の空に神崎美月のライブロゴが大きく映って、さらに次の瞬間、ライブ会場全体がきらきらとしたバブルや星々が浮かぶ、紫色をした宇宙みたいな空間に私たちは包まれた! 
 美月様ーーッ! 美月ちゃぁああん! と叫ぶ観客の興奮が最高に高まると、ステージの中央から、神崎美月が不思議な光から歩き出してきた! すごい……これがアイカツライブなんだ!
 
 
《強気に Move ハートに Kiss このまま未来も変えれそう 夢みる自分に恋したい だってわたしがわたしのヒロイン》
《ドキドキしてる とまらない 明日へ Move on now! 恋してる》

 歌いだしさえ待ちきれない観客の手拍子に合わせて、ステージの上の神崎美月が微笑みを振りまく。

《急成長するわたし、ちゃんと見ていて 振り向かせたい トキメキのサプライズ
 
 軽やかで繊細なダンスが、彼女の手足をまるで蝶のようにひらつかせるたび、その軌跡から黄金に輝く薔薇のような、ダイヤにも見えるきらめきが宙を舞う。

《気まぐれじゃない あついオモイはじまってるの 近づきたいよ トクベツな女の子になろう》

――神崎、美月。
 
《ドキドキしてる 運命に片思い とまらない わたしだけのストーリー》
《いつだって あこがれを現実にできるのは 信じるチカラ》
 
《キラキラしてる 輝きに飛び込もう》
 
――神崎、美月……!
 
《さぁ、来るわよ!》
 
 彼女が両手を広げて飛び立とうとしたとき、私たちの目には神崎美月と彼女を包む美しい空間しか映らなくなった! ううん、例え話なんかじゃなくて、あの瞬間は本当にそう見えたんだ。

《手に入れて なりたいわたしがいる 正直に はしゃぐココロで追い越していくよ 駈け出して今》

 紫色の雲でいっぱいの宇宙に浮かぶきれいな薔薇の花びらへ、神崎美月が華麗なステップで次々と飛び乗っていく。

「これ、スペシャルアピールだ!」
 
《ドキドキしてる》
《キセキに Wink 見つめて Touch ここから全部がはじまる》

彼女が優しいウインクとキスを私たちへ投げかけると、そこから飛び出した大きな水色のガラスに包まれたスペードのマークが空に広がった。
 
《とまらない》
《感じてつなげてステップ UP もっと感動したいよエブリデイ》
 
 さらに彼女が微笑みながらそれを指さすと、ガラスが弾けて、中から七色の薔薇があしらわれたスペードのステンドグラスがあらわれた。
 
《いつだって》
《強気に Move ハートに Kiss このまま未来も変えれそう》
 
 神崎美月は空へ向かって思い切りジャンプして、そのステンドグラスへ飛び込んだ! するとその破片すべてが、まるで彼女自身から発せられたかのような光を反射して、キラキラと私たちへ降り注いだ……。

《運命を振り向かせたい》
《明日へ Move on now!》
 
 
☆☆☆
「ただいまー!」
 この日のために新しく買ってもらったスニーカーを脱ぎ捨てて、らいちがお母さんの待つリビングへ駆けていった。
「おかえり。どうだった?」
「すっごかった! ね! お姉ちゃ」
 と、らいちがはしゃぎながら後ろを振り向くと、びっくりしたようすで声が止まっちゃった。でも、それもそうかも。だって私、ぽわぽわした顔で、ふらふらしたままソファーに座り込んじゃったんだもん。
「うん。でも、なんか、あんまり覚えてない……」
「えー!? 本当?」
 
 だって、あんなの初めてだったんだもん。何がなんだか、よく分かんないけど、私きっと、今日は眠れない……。
 
 
☆☆☆
「ただいまー。あら、二人揃ってなに? アイドル?」
「うん!」
 らいちと一緒にこの前のライブの映像を観ていると、ママが買い物袋をさげながら帰ってきた。
「一緒に行ったのに、お買い物」
「へいき」
「あのね、すごかったの。美月ちゃん」
「行ってよかったでしょ」
 らいちの言うとおり、美月ちゃんのライブは本当に行ってよかった。さっきから何度もライブの映像を観ているけれど、美月ちゃんがステージでダンスをするたびに、あのドキドキが胸に湧き上がってくるんだ。
「本当に行ってよかった」
「あおい!」
「姐さん!」
「いらっしゃい」
 あおいが突然廊下から入ってきて、ママに軽くあいさつをした。ど、どうやって入ってきたんだろう。
「いちご、耳寄りな情報があるの」
 
☆☆☆
「いちごはこの学校、知らないわよね」
 あおいがどこかの学校のパンフレットを渡してきた。スター、ライト……?
「あっ、スターライト学園!」
「スターライト学園?」
「知らないの!?」
 らいちが目を丸くする。
「だと思ったわ。スターライト学園は日本一のアイドル学校。通う生徒は全員現役のアイドル」
「毎日、アイカツシステムのレッスンとかしてるんだよ」
アイカツシステム……?」
「あぁ~、もう。『芸能人はカードが命』だよぉ!」
「らいち、よく知ってるわね。そう、『芸能人はカードが命』。世の中のアイドルは全員、アイカツカードを使って衣装やステージをセルフ・プロデュースしているの。そのレッスンをしながら、アイドル活動、すなわちアイカツを行うのがスターライト学園」
「美月様も生徒なんだよ」
「ええっ、美月ちゃんも!?」
 らいちがパンフレットのページをめくる。生徒の紹介ページに、美月ちゃんがいた。わぁ、本当だ。
「そう! スターライト学園のトップに君臨しているのが、神崎美月よ」
 あの神崎美月ちゃんが通ってる学校だなんて、スターライト学園、すごいところなのかも。
「で、耳寄りな情報はここから。実は、スターライト学園の編入試験が行われることになったの」
「編入?」
「……私は受ける」
 ええっ!? あおいがスターライト学園に?
「姐さんがアイドルに!? いいかもいいかもー!」
「すごいね、あおい。でも、受かったら学校は?」
「転校することになる」
「だよね。学校、別になっちゃうんだ」
 あおいがアイドルになることは嬉しいけど、別の学校に通うことになるのは、やっぱり寂しい。
 でも、あおいが首を横に振った。
「ううん。いちごも一緒に受けるの」
「えっ、えぇぇ~!?」
「ええええ!? お姉ちゃんが、アイドルに?」
 わ、私がアイドルに……? どど、どうしてだろう……?
「私、分かるの。いちごは『アイドルのにおい』がする!」
 驚いたらいちが、私のにおいをかぐ。においは……しないみたい。
「えぇっ! いきなりそんな!」
「楽しそうだと思わない? 美月ちゃんみたいなアイドルになれたら!」
「それは……」
 そんなこと考えもしなかった。私がアイドルになるだなんて。私が、美月ちゃんみたいにステージの上で歌って、踊って……? でも、確かに美月ちゃんはとても楽しそうにしてた。私まで楽しくなっちゃったんだもん。
「そう、思う」
「なら一緒に受験しよ! 私の付き添いのつもりでいい」
「付き添い? うーん……」
「お姉ちゃん、やってみれば?」
 らいちが試験を勧めてくる。そ、そんな簡単に言われても。うーん。
「アイドルの素質その一! それはなりたいと思うこと」
 なりたいと、思うこと。
「やるだけやろう。持ち替えるのよ、おしゃもじをマイクに!」
 
☆☆☆
 夜ごはんの時間。
 おしゃもじを、マイクに。うーん、あおいに言われたこと、まだ飲み込めてない。今私が握ってるこのおしゃもじを、ううーん……。
「いっただきまーす!」
 アイドルの素質……アイドルのにおい……。
「ん? どうしたの、いちご」
「お姉ちゃんはおしゃもじをマイクにね!」
「いいの! ……いただきます」
 私、ぼうっとしちゃってた。
 
☆☆☆
 美月ちゃんみたいなアイドル、なれたら楽しそうだとは思うけど。
『大人になっても、一緒にお弁当屋さんするのが夢かな!』
 この前お母さんと話したことを思い出してみる。
『でもいちご、うちのことばっかりじゃなくて、いつか自分のやりたいことを見つけてね』
 自分の、やりたいこと。私の、やりたいこと。
「いちご」
「あっ、ママ」
 夜、私の机で美月ちゃんの切り抜きアルバムを眺めながら考えていたら、ママが部屋に入ってきた。
「やりたいならやってみなさい」
「えっ、らいちから聞いたの?」
「うん。この子、神崎美月ね。いい顔してるじゃない」
「ママもそう思う?」
「ええ。持ち替えなさい、おしゃもじをマイクに」
 その時なんだか、ご飯をよそうように、ふわっと背中を押された気がした。
 
☆☆☆
「そうと決まれば今日から特訓!」
「うん! やるからにはやる!」
「おー!」
 
 私は夢の様な世界を見て、夢を見つけたのかもしれない。
 ストレッチをして、神社の階段を駆け上って、公園でダンス。鏡の前では笑顔の練習。あおいに芸能情報を教えてもらったり、一緒にカラオケで何度も歌ったり。
 どれも大変だったけど、なんだか少し、アイドルに近づけた気がする。私もなれるのかな、美月ちゃんみたいなアイドルに!
 
☆☆☆
 そして、スターライト学園編入試験当日。
「これは……」
 私は、玄関の外まで伸びる長い長い列にびっくり。
「今回の受験者は推定千人。一人も受からないかもしれない狭き門」
「うぅ。でも、やるしかないね!」
「ええ!」
 
 最初の試験は学科。アイドルの基本情報? 音楽の細かいジャンル? っていうか、数学!? うぅ、あおいにしっかり教えてもらったはずだけど……。
 
「あなたは、どうしてこの学校を志望したのですか」
「私は幼い頃からダンスを習っていて、自然と芸能の道を志すようになりました」
 次の試験は面接。隣の子がすらすらと志望動機や得意なことを話せてるところを見たら、ちょっと緊張しちゃった……。
 
「はぁ。やっぱりみんなすごいね」
 試験が2つ終わって、少し休憩。学科も面接も、ぜんぜんダメだった。
「自信を持って、いちご。言ったでしょう。あなたにはアイドルのにおいがする、って」
「それ、どういうこと?」
「あなたはアイドルに向いてる。私には分かるの」
「そうなのかなぁ」
「とにかく、次はライブオーディションよ。最後まで頑張ろう!」
「うん!」
 そうだ、やるからにはやる。最後まで頑張らなくっちゃ。
 
☆☆☆
 私の順番。大きなドアを開けて、ライブオーディションの部屋へ入る。大きな部屋の中央には、アイカツカードが乗せられたテーブルがある。私がそのテーブルへ歩いて行くと、どこからともなく声がした。
「これより、入学オーディションを始めます。アイカツカードを3枚選んで、自らの衣装をコーディネートし、ステージに上ってください」
「はい!」
 少し迷ったけど、私は直感を信じた。
「わぁ……!」
 もう一枚ドアを開けると、床には赤いカーペットが敷かれていて、その先にはクラウンのようなデザインの『アイカツシステム』があった。アイカツの基本的な知識としてあおいに教えてもらったけど、本当にこういう形なんだ。かわいい!
 アイカツシステム、正確に言うとアイカツゲートには、アイカツカードをはめ込んでスキャンするスロットがある。こんなにかわいいアイカツシステムだけど、今からこのカードを使ってライブをやるんだと思ったら、心がきゅっと引き締まった。
 アイカツカードをセットして、キュルルル……と、アイカツシステムがカードを読み込んで、天井にプラネタリウムのような光を映し出す。スロットや脚のような部分が展開し、カーテンが開いて、まるでかぼちゃの馬車のようになって、ゲートは私を迎え入れた。
「ママ、らいち。私、行ってくる!」
 その先に待っていたのは、一瞬のまぶしい光と、宙に浮かんだレースのランウェイ。その上には、私の選んだアイカツカードが並んでいた。トップス、ボトムス、シューズ……カードへ飛び込んでいくと、身体を光が包んで、弾けた光が衣装になった。くるりと回って、ピンクステージコーデの完成! うん、やっぱりこれ、かわいい!
 
「受験ナンバー367、星宮いちご
 もう一つ光のゲートをくぐると、そこはみんなが待ってるステージだった。
「なかなかのコーデね」
 すごい。審査の人も、学園長も、さっきの面接みたいに、みんなみんな私を見ている。なのに……なんだか楽しい。これが、アイカツステージ!
 
《さぁ 行こう 光る 未来へほら 夢を連れて》
《ポケットに一つ勇気握りしめ 走りだしたあの道》
 
 私は踊りだした。歌いだした。
 
《白いシャツ 風なびき 飛べるよどこまでも》
《たまには泣き虫の雲 太陽が笑い飛ばす》
 
 それに合わせて、観客のみんなも盛り上がる。
 楽しくて、力が湧いてきて、身体が勝手に動いた。目の前がパッと明るくなる。
 
「あのオーラは」
「美月、あなたも見に来たのね」
 
《仲間だって 時には ライバル 真剣勝負よ》
 
 楽しい。ここにいたい。ずっと!
 
《アイドル 活動 Go Go Let's Go ゴールに向かって》
 
 その時、光が私の身体をふわっと包んだ。宙に浮かんだ。
 
《走り続ける 君が見える ファイトくれる》
 
 胸から小さなハートを放つと、それが弾けて大きくなって、私を乗せて、ハートの軌跡を残しながら、どこまでも私を運んでいった――。
 
 
「入試でスペシャルアピールを出すなんて、よほどレッスンしたのかしら」
「ふふ。美月、星宮いちごを覚えておきましょう」
「そうですね(面白くなってきた。早く私のところまで登ってきて……)」
 
 
☆☆☆
【編入試験合格者】
048 149 256 271 294
367 405 622 763 810
 
「いちご……810番よね!」
「あおいは763番!」
「うん!」
「やったあ!!」
 
 こうして、私とあおいのアイドル活動、アイカツが幕を開けた。
 
「やれやれ。仲良しでいられるのも今のうちだよ」
 
「ん?」
「あおい、どうしたの?」
「いいえ、なんでもないわ。それよりいちご、合格おめでとう!」
「うん! あおいこそ♪」
 
☆☆☆
「今週のアイカツ格言! メガハンバーグ弁当いっちょー♪」
「いちご、それ格言?」
「じゃあもう一つ。『芸能人はカードが命』」
「やっぱりこれね♪」
 
 
「私たちスターライト学園に入学します! 楽しみだね、あおい♪」
「どんなことがあっても友達だよ、いちご」
「えっ、どういうこと? ――次回、アイカツ!『アイドルがいっぱい!』いつでも熱く、アイドル活動!」